ひふみんから藤井聡太四段へ 究極の世代間コミュニケーション 天才が天才に渡したバトン 其の九



歩頭桂の強烈な一手。桂馬と交換するものとは?

前の記事で、たった一枚の桂馬を敵の歩の頭に打ちこみ、矢倉を崩す必殺技”歩頭桂”について書きました。

前回までの局面を再度掲載します。


いかがでしょうか?この桂馬を見て、はじめて見た方は、

”なんじゃこりゃ~~~” (松田優作の探偵物語じゃないよ。)

って思うと思います。

”タダだと思って取ったら最後、玉の頭に巨大な隕石のような歩が垂れてしまいます。

いつも思うんです。矢倉の戦いで、一番強烈な攻めっていうのは、この飛車先の歩が起点になった攻めじゃないかって。だから飛車先の歩を伸ばしておくと、最後の最後、逆転勝ちができる可能性が高まるのではないかって。

確かに飛車先の歩の伸ばしを先手なら26、後手なら84に保留することで、桂馬を跳ねたり打ったりすることはできるのですが、この歩頭桂と比べると、場合にもよりますが、攻めの軽さを感じてしまいます。

まるで”肉を切らせて骨を断つ”と言いますが、”歩頭桂”はまさに骨を断つような技です。

矢倉が大好きな方で、勝率が今一つ上がらない方。例えば、序盤や中盤は優勢に進めて行けるけど、終盤でいつも逆転負けをくらってしまう方は、この歩頭桂を打てる局面を作ることを目標にされたらいかがでしょうか。

きっとやられた方は困ります。私、何度もやられましたので気持ち痛いほど分かります。この桂馬、一体何と交換できるの?って思ってました。

確かに、現実的には歩との交換にしかならないように思えます。でも、見えないだけで、実は最も大事な玉との交換を迫っているように思えてなりません。
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守備駒は玉のまわりにいるだけで働いている。

▲6八金引 △7八桂成 ▲同 金 △同銀成 ▲同 飛 △6七金


先手は▲68金引くと指しました。攻め駒を手に入れるために、後手の攻めを催促したのだと思います。そこから、流れるような手順で、先手陣を守っていた金駒が盤上から消されてしまいました。

”攻め駒は交換して駒台に置けば、どこにでも打てるので働きが増すけれども、守備駒は玉のまわりにいるだけで働いている。だから攻め駒は交換するけれど、守備ゴマは交換されてはいけないのだ。”

このような言葉をかつて森下卓九段がお話されていたと記憶しているのですが、まさに目から鱗が落ちたのを覚えています。

先手陣の玉のまわりで最後に守備についている駒が攻めの総大将である飛車です。

”玉飛接近すべからず”

飛車を狙われながら玉も一緒に追われてしまうから玉と飛車は離れていた方がよいという意味です。

当然後手もそれを踏まえて△67金と飛車を攻めつつ玉を狙ってきます。

まるで絵に描いたような攻めです。

最強の攻め駒にして最後の砦となる駒、”飛車”。

先手玉ピンチ。しかし同時にこんなことも思います。

将棋の戦法は大きく、「居飛車」と「振り飛車」に分けられています。

居飛車戦法を指す人の中で、なぜ居飛車が優れていると考えられるのか?

居飛車の元々の位置、先手であれば28の位置が最高の場所であるからである、というのがその理由だと私は教えられました。

なぜ28の位置が最高の場所なのか?

典型的な居飛車の将棋である矢倉戦において、攻めては22に囲われている後手玉を睨み、守っては、88に囲われている自玉を守る。

これです。

ということは、28の飛車が今、必死で先手玉を守っています。最強の攻め駒であり、最後の砦ともいうべき28の飛車が守りに働いたということは、裏を返せばその瞬間、最も先手陣には守備駒がないということです。

ではその駒はどこに行ったか?

駒台の上です。敵の攻め駒と交換されて駒台にのっています。

今現在、後手玉を狙う先手の攻め駒は、64角、46角、25桂、そして駒台にある二枚の銀と1枚の桂馬です。

”4枚の駒の攻めはきれない”

果たして先手に何か秘めたる狙いがあるのでしょうか?

いよいよ局面はクライマックスを迎えています。

続きは次回に。チャオ!

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