ひふみんから藤井聡太四段へ 究極の世代間コミュニケーション 天才が天才に渡したバトン 其の十



最強の攻め駒にして最後の砦となる駒、”飛車”。

先手は、居飛車が居飛車であるという意味を象徴するかのような駒、飛車まで自玉の守りに使って玉を懸命に守りました。後手は、玉飛接近型を咎める意味も込めて、飛車取りに△67金と打ちました。その前回までの局面を再度掲載します。

先手玉は見るからにピンチです。飛車を取られると、詰まされてしまいそうです。しかしこの瞬間、何か後手玉に迫る手があれば逆転ということも・・・。

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強手、必殺”歩頭銀”!!

▲6九銀 △8六銀

先手は▲69銀と守りに銀を打ちました。この銀は、ここを手抜いて攻めるわけにはいかない、ということで守りに銀を一枚打ち、守りを強化しました。しかし続く後手の攻めが凄まじい手です。歩の頭に銀打ちです。

歩の頭に桂打ちというのは、矢倉崩しの歩頭桂で有名です。しかし、銀を打ちこむというのはそうそう出現する手ではありません。

さっき、銀を一枚持っていて後手玉に迫る手がなかったのだから、銀を守りに使ってしまった先手にもう一枚銀を渡したって大丈夫。こんな理屈です。

銀を渡すにしても、あまりにも強引な渡し方です。

 

先手必死の頑張り!

▲3一角成 △同 玉 ▲6四角 △4二香▲7七銀

31角成と切りこみます。金を取って粘ろうと言う手も見えてきます。△31同玉の後、64角と二枚目の角を王手で活用します。後手は△42香車と受けました。先手、攻めの継続が難しいということで、▲77銀と受けました。

わたしが後手の立場なら、早く飛車がほしくてたまらないというところです。しかし、ここで飛車を取ると、形よく同銀と取られてしまい、縦に二枚並んだ銀が美しく、守備力も強いです。

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玉頭の歩を取って進む銀

△8七銀成 ▲同 玉 △8六銀 ▲同 銀 △同 歩▲同 角

この△87銀成が凄まじい手です。何度も凄まじいと表現すると凄まじいの言葉の価値が下がるようですが、この言葉が一番ピッタリだから仕方がないです。

ほんとうに凄まじいの一言。

だって、歩頭桂と違って、銀は前に進むことができます。玉頭を守る歩をむしりとるようにして銀を突進した結果、玉が引っ張りだされました。この玉が引っ張りだされたということが、後手の飛車先の歩に近づいたことを意味します。つまり危険地帯に引っ張り出されました。

そして、浴びせるように△86銀。

よく攻めが重いとか軽いとか表現しますが、超~重いです。まるで斧のように感じます。

藤井4段の攻めは、一度網にかかると逃さないような、そんな印象を持ちます。先手が守りに手を入れてはいるのですが、その守りをはじき飛ばすような強烈な攻めが魅力的です。

先手は▲同銀△同歩▲同角と懸命に玉頭を守ります。

 

鮮やかな収束

△同 飛 ▲同 玉 △6四角 ▲7五桂 △8五歩▲同 玉 △9四角 ▲投了

△86飛車と飛車を切りました。この飛車きりが鮮やかな収束の一手です。

▲86同玉に対し△64角と打ちました。75桂と歩の頭に打ちます。いわゆる犠打を打って王手を防ぎました。そのあと後手は△85歩と打ちましたが、これに対し、逃げると上から銀を打っていって詰みます。なので▲85同玉です。とどめの△94角と打たれて終局となりました。

投了図以下は、 ▲8六玉とすると、

△8五歩 ※▲8七玉 △8六銀▲8八玉 △8七金 ▲7九玉 △7八金右 ▲同 銀 △6八金打
▲8八玉 △7八金寄 ▲9八玉 △8七銀打

となります。

※の△85歩に対して、▲95玉と逃げる手は、

▲9五玉 △8六銀▲8四玉 △7三金

となります。

この投了図を見ると、飛車が▲78に居てずっと△67金は飛車を取りませんでした。この金がここにいることで、先手玉の右辺への逃げだしをきっちりと遮断しています。ただ駒を取ればいいわけではないということが分かります。

 

あとがき

これまで十回にわたって、ひふみん対藤井聡太四段の対局を書いて参りました。ひふみんが心血を注がれた加藤流の矢倉で、藤井四段のデビュー戦を見ることができたことは、すごいことだと思いました。

タイトルにも書きましたが、「究極の世代間コミュニケーション 天才が天才に渡したバトン」。これは、まさしく還暦以上年の離れた天才と、これから新たに将棋界をひっぱっていく天才との、世代を超えたコミュニケーションと言えると思います。

この対局を通して、天才は天才に何を伝えたのでしょうか。それはきっとお二人にしかわからないことだと思います。

ただ、加藤九段の将棋は、敗れはしましたが、自分の信念を貫く姿勢と、76歳になっても勝負師としての闘志を失わないその姿にとてつもなくかっこよさを感じたのは私だけではないと思います。

ひふみんのあの愛くるしいキャラクターからは想像もできないくらい勝負師の一面を少しでもお伝えできたらと思い記事にしました。ここまでおつきあいくださりありがとうございました。

続きは次回に。チャオ!

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