其の壱 加藤(ひふみん)流の出だし 藤井聡太六段の二度目の連勝をくい止めた棋士、井上慶太九段。古風な矢倉がかっこいい。



中学生最後の対局

藤井聡太六段にとって、2018年3月28日、中学生最後の対局がありました。第68期王将戦一次予選です。

藤井六段は、16連勝をあげており、これに勝てば17連勝。一度ついえた29連勝の自己および棋界の最高記録を更新するのか、中学生最後のしめくくりとしても注目される対局でした。

対局相手は、井上慶太九段。かつて順位戦A級に3期在籍した強豪であり、棋界を牽引するトップ棋士の一人です。井上九段は、勝負師であるとともに名伯楽でもあります。弟子には、稲葉陽八段、菅井竜也王位、船江恒平六段がいます(2018年3月時点)。いずれも将来の棋界をしょって立つ有望な棋士です。

「恥ずかしくない将棋を指せれば」と考えて対局にのぞんだ井上九段にとって、藤井聡太六段との対局はどんなものだったのか?勝負師としてまみえる以上敵としての意識と、どのくらいの器量なのかを測ってやろうかという意識と。

対局前の予想としては、破竹の勢いの藤井六段が勝つのではないかと言われていました。何より、これまで羽生永世7冠を破ったことからその実力は証明済みです。

しかし、結論から言ってこの将棋、勝ったのは井上九段でした。藤井六段の連勝が止まったことや中学生最後の対局が黒星であったこともショックではありますが、それ以上に、井上九段がどうやって藤井六段を破ったのか?このことに興味しんしんな気持ちを抑えることができません。なのでいつものごとく並べます。

では参ります。よろしくお願いします!

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加藤流な感じ。ひふみんな感じ。

▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩 ▲7七銀 △6二銀▲2六歩

この矢倉の出だしがなんとも言えず、いいですね。

何がいいんですか?って言われてしまいますが、▲77銀を上がるタイミングが早いんです。また、▲26歩の飛車先の歩突きが早いんです。

▲77銀は▲66歩の方が手広いって言われていましたし、▲26歩は保留して別の手を指した方がいいと言われていました。いわゆる飛車先不突き矢倉です。

これに対して、▲26歩を突く形はご存じひふみん加藤流です。加藤流の出だしな感じなので加藤流と言いましたが、飛車先不突き矢倉が登場する前は、かなり多く指されていたんです。私はこちらの方が好みです。

居飛車の将棋はやはり飛車先を突かないとはじまらない、そんな思いが私の心の片隅にはあるのでしょう。

 

矢倉の魅力

△4二銀 ▲2五歩 △3三銀

 

あえて古い戦法をぶつける作戦を立てていたという井上九段。この▲25歩の飛車先の歩突きを見てしびれました。この▲25歩こそ、心の底に流れている、生粋の居飛車党(偏見)を感じます。やはりこの飛車を活用するための最も直接的というか、シンプルな意思表示がかっこいいんですよね。

この歩を受けるために△33銀。当然だと思います。この形こそ矢倉の基本図として長年脳裏に焼きついたものでした。

この局面から私が教わったことがあります。

矢倉は、序盤から角交換を拒否するとともに、飛車先の歩交換も拒否する。あたかも戦闘を回避するような作戦である。しかし、ひとたび組上がり戦端が開かれれば、大嵐のような激しい応酬が繰り広げられる。

矢倉は決して消極的な戦法ではなく、組上がるまでに水面下で凄まじい応酬が繰り広げられていると思いなさいよ。歩がぶつかって戦端が開かれたらすでに勝負は決まっていると思いなさいよ。

解釈するとこんな意味になるでしょうか。矢倉の魅力として今でも心に残っています。

 

続きは次回に。チャオ!

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