其の八 いぶし銀の玉寄り。 藤井聡太六段の二度目の連勝をくい止めた棋士、井上慶太九段。駒得は裏切らない。



嵐の前の静けさ

前回までの局面を再度掲載いたします。


先手は絶妙の手順で桂頭に空間を作りました。いつの時代も桂馬の頭と角の頭は攻めの急所です。

何となくここから激しくなりそうな予感がします。

 
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豹変!積極的な攻めの姿勢。

▲2一銀 △2二金 ▲6四歩


これまであまり攻めに積極的な姿勢を示していないように感じていた先手が豹変し、攻めに転じました。まず▲21銀打ち。この手は後手の△32の急所の金に働きかける急所の銀打ちです。もちろんこの金がいなくなると、▲23飛車成りが実現します。このため、金を△22金と逃げるのは自然な一手です。

△21金と銀を取られたらどうしようって思うのですが、そしたら▲23飛車成りです。「竜を作ることができるなら銀一枚くらい安いもの」。そんな風に感じることができるくらい、私は竜を作ることが攻めの急所だと思っています。

だからこそ、先手があっさり(?)後手に竜を作らせたことが信じられないくらいびっくりだったのです。

継続の攻めで先手は▲64歩です。この手が厳しい手だと思いました。これを同銀と取ると、▲31角の金銀両取りが実現してしまいます。なので同銀と取れないのがつらいところです。

 

両取りを防ぐアクロバティックな受けは?

”もしここで仮に△64同銀ととったとしても、△63金と受けたら受かったんじゃないのかな?”

確かにその通りだーーーーーッ。しかもその受けなんかカッコいいッ!

その図を参考までに掲載しました。(参考図掲載)


確かに受かってます!ファンタスティックです。

じゃぁいいじゃん。なんでこう指さなかったのよ!でもですね、藤井六段が指さなかったということはこれじゃダメなんです。そのダメな理由を私なりに考えました。

おそらくこの手に対しては、▲22角成△同竜▲32金打で竜を捕獲する手があります。こうなると23飛車成も実現する可能性が出てきて、後手受け切れないということだと思われます。だから却下!残念(-_-;)。

 
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駒得は裏切らない!堅実な指し回し。

△3六歩▲6三歩成 △同 金 ▲4五桂 △3七歩成 ▲3三桂成 △同 金▲2五飛


さて後手は、△63の銀を逃げずに△36歩と攻め合いに活路を求めます。一方的に攻められるよりも、攻め味を見せておかないと逆転勝ちの芽が出てきません。銀損の攻めです。

先手は▲63歩成と銀をまるまる得してから、▲45桂馬と跳ね出します。後手は△37歩成、飛車取りとしますが、かまわず▲33桂成です。私などは飛車を取られたら何か怖いと思ってしまい、躊躇しますが、仮に飛車を取られたとしても、冷静に駒の損得から考えて先手がよいのでしょう。

それにしても大きな駒損を後手は抱えていますが、逆に言えば駒損を重ねざるを得ないように後手にさせているというように見ることもできます。

先手の立場に立てば「駒得は裏切らない」を地で行く堅実な手順を積み重ねています。井上九段のこの一歩ずつ着実に形勢を引き寄せていく印象の指しまわしはとても勉強になります。

しかし、相手は天才藤井六段です。藤井六段は凄まじい切れ味の日本刀のような攻め力を持っています。なので何かを狙っているというのは間違いないでしょう。

 

いぶし銀の玉寄り

後手は△33同金としましたが、次に先手が指した▲25飛車が飛車を逃げながら柔らかい一手だと感じました。この手は△65歩をとるぞ、と見せています。仮に▲65飛車の転回が実現して後手の△66桂馬が取られる展開になると、後手は攻めの重要な手がかりを失ってしまいます。

こうしてあとから見てますと、前に先手が▲79玉と寄った手がいかにいぶし銀のような手だったかということに気付きました。ここで後手から△36角や△14角と打たれると、もし先手玉が▲69玉の位置にいたら、王手飛車がかかってしまいます。

先手の▲25飛車に対する後手の応手が注目されるところです。いったいどうやって飛車の転回を阻止するのでしょうか?

続きは次回に。チャオ!

 

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