其の十 玉頭の脅威を祓う自陣角。 藤井聡太六段の二度目の連勝をくい止めた棋士、井上慶太九段。絶妙の桂馬のタダ捨て



悠然と、と金を寄る

前回までの局面を再度掲載いたします。


私が後手ならば飛車を打ちたくて仕方がない局面です。しかし指された一手は△47と。じっと「と金」を寄りました。

これは私には理解ができない世界です。なので本譜手順を追ってみます。

 
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俄かに先手玉が危険な状態。

▲8九玉 △5九飛▲7九桂 △5八と


この△47と金寄りに対して、先手の指した手は早逃げでした。この早逃げは一体どれほどの価値があるのか、全く未知数です。

後手は待望の△59飛車です。待望していたのは私でした。失礼しました。このくらい焦らして打ちおろすのがよいのでしょうね。笑

▲79桂馬と受けました。歩があれば▲69に打ちたいところだったと思います。底歩は堅いですから。

後手はその歩で攻めてきます。△58とです。この歩は△36歩からと金になってここまできました。なんかここで先手の要の金と交換できると思うと達成感があります。

先手玉はある意味2枚飛車で攻められる格好となりました。△59の飛車と、△82の竜です。かなりやばいくらいの迫力です。△82竜の効きを防いでいるのは、なんと▲88歩の一枚なのですから。まさしく大型台風を戸板一枚でしのぐ感じです。

私は、▲89玉と寄った手でどれほど玉が安全になったのか、ちょっと分かりません。ただ、△66桂馬が効いている78の地点の真正面に玉を置いておく方が危険だったのではないか、と推測しています。とにかく井上九段の玉捌きは前記事でも書きましたが、絶妙です。

 

先手、絶妙の端角!玉頭の脅威を払う自陣角!それに連動する桂馬の跳躍!

▲9五角 △4一玉 ▲3四桂 △5二玉


この先手の▲95角が、戸板一枚の▲88歩の守りを強化する一手だと思います。この一手で、後手が84の地点に桂馬や歩で相駒をすれば、竜の効きが止まります。竜の効きが消えると、98、87、86と上部への逃げ道が開けます。

そんな逃げ道を先手に与えるわけにはいきません。”相駒はいたしません!”とばかりに△41玉と玉を寄ります。この玉寄りが裏目に出たかもしれません。なぜならこの後先手の▲34桂跳ねがすごい切れ味だったからです。

角取りに打ったけれど肩透かしをくらわされて▲26でずっと取られるのを待つだけの桂馬だったのが、ここにきて、凄まじい働きを見せます。

この▲34桂馬、まずタダです。・・・そうなんです。ただで取れるんですよ。でも「タダより怖いものはない。」とはこのことで、取ると、▲43銀打ちと玉の頭に重しを乗せられてしまいます。こうなると、次に▲52銀打ちからの詰みです。

では、このまま▲34桂馬を放っておくとどうなるか?例えば、△68と金と寄ったとします。

△68と金▲42銀△同竜▲同桂成△同玉▲68金引く(参考下図)


後手は竜で▲42銀を取らないと詰みなので取らざるを得ません。すると結果として後手は、竜と銀桂の交換で二枚換えになります。

しかし、後手は喜べません。なぜなら、この桂馬はタダで取られる運命の駒で、実質的には、竜と銀の交換になるからです。しかもこの竜は後手にとって攻めにも守りにも生命線となる駒です。攻めては先手玉の逃走経路をふさいでおり、受けては自陣の2段目、横一線に効いています。

先手が▲68金と手を戻した局面を見ると、8筋の逃げ道がす―ッと空いていて、ここに待ち駒を配置しようにも、▲82飛車の王手で全て抜かれてしまいます。

実はもう一つ桂馬の働きがあります。それが本譜でも出現する▲15角からの飛車金両取りの筋です。これは▲26の桂馬が跳ねていなくなったために生じた筋です。

ここから先のつづきは次回に!チャオ~!

 

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