其の十一 攻防に睨みを利かす双竜の働き。 藤井聡太六段の二度目の連勝をくい止めた棋士、井上慶太九段。居飛車党の飛車の基本の位置。



八面六臂の桂馬

前回までの局面を再度掲載いたします。


前回の記事では、八面六臂の働きを見せた▲26桂馬の34への跳躍を書きました。この桂馬を受けて、後手は△52玉と逃げました。

ここで一つ疑問があります。

なぜ、最初から△52玉と逃げなかったのか?

この疑問について考えたくなってしまうのが私の癖です。自分なりの解答を得ないと先に進めないのは、算数のテストで、順番に解いていかないと気が済まない性格を引きずっています。

疑問の発端は、藤井六段が間違えたはずはない、という前提が私の頭の中に確固としてあります。きっと△52玉では嫌な変化があったのだ、と思います。

その変化とは何なのか?これをいろいろ考えてみて、私なりの結論を申し上げます。えへん。(って全然へぼですから。態度だけ偉そうにさせてちょ。笑)

仮に△41玉ではなく△52玉とした場合と仮定して行きます。

ここで▲25角と打つのではないでしょうか?

これ、一目△34歩と打ちたくなります。しかしこれを▲34同桂と取ります。この後、もし▲24歩とか角の進退を催促されたら、▲42桂成りからの両王手(角が効いています。)から、▲61角成りとします。すると、次に二枚目の角が▲51角成りとする攻め筋も開けてきます。

また、▲25角は自陣の守りにも効いています。たとえば何かの時の△58飛車成りの王手を防いでいたりします。

あと、△34歩と打たずに、玉を逃げる場合は、もちろん▲61角成もあると思いますが、仮に△42玉と逃げた時は、▲44歩の取りこみが、歩切れを解消して、玉頭に迫る味の良い一手になります。

いかがでしょうか。

 
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二枚目の端の自陣角!

▲1五角 △6八と ▲同 金 △1九飛成 ▲3三角成


この先手の▲15角の一手は、2枚目の自陣角です。しかも端角です。しかも飛車金両取りです。そんなの言われなくてもわかりますょ!自陣角に興奮しないでくださいッ!って言われそうですが、飛車金両取りを見せて、先手の攻めを催促して、早く後手にと金を清算させてしまいたい、そんな思いが伝わってきます。

後手に▲68の金を取られました。と金との交換なので普通はほぼタダです。しかし、先手にとっては歩切れ解消の恩恵になっています。しかも、金を▲33角成で先手も取り返すことができました。

△19飛車成りとされ香車を取られましたが、飛車が△59のままだと、将来、78の地点で清算した時、△58飛車成と一間飛びの竜の形をつくられるとかなりつらいです。なので、今、飛車を僻地に追いやったと思えば先手に利があります。

 

居飛車党における飛車の基本ポジションに陣どり攻防に睨みを利かす竜!

この局面をあらためて眺めてみて、とても美しいなって感じます。特に後手の陣形を見ていて、印象に残るのは二枚の竜です。

後手は竜を二枚つくり、一枚の竜は、自陣竜にしていて、守りにも、攻めにも効いています。この竜の位置は、居飛車党における飛車のニュートラルポジションです。

竜になってここに居ます。鎮座しています。鎮座しているだけで、凄まじい働きをしているのが分かります。

もう一枚の竜は敵陣に居て、敵玉を攻めています。竜の理想とする姿ではないでしょうか。この2枚の竜、すなわち双竜が必死になって後手玉を助けています。

一方先手も2枚の角が働いています。一枚は、自陣に侵入した飛車を追って馬になり、敵玉に迫っています。もう一枚は、生角ですが、自玉の上部を敵の強力な竜から援護しています。

先手も後手も一生懸命、2枚の大駒が働いています。その必死さ、ひしひしと伝わる局面だと思います。

続きは次回に!チャオ~。

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