今もなお忘れられない角 内藤國雄先生著「将棋定跡入門」の中で見た升田流の自陣角。



将棋の本は睡眠薬の如し

内藤國雄先生の書かれたこの本の中に、升田幸三先生が編み出したと言われる角換わりの定跡が書かれていました。15年以上にも前に読んだこの本の中で唯一記憶に刻み込まれた局面。より正確に言えば局面というよりも一つの駒ですね。

当時の自分は戦法名もよくわかっておらず、後で思い返すと、角換わりの中でも腰掛銀の形でした。

序盤でまだ双方が陣形を整えており、未だお互いの駒がぶつかる前の駒組みの段階でした。

角が換わってるんだからぶつかってるよ、という突っ込みはなしでお願いします。

駒組みが進んで、先手側が▲45歩と位を取るところがあります。

今でこそ、『▲45歩と位を取る』ってあっさり言っていますが、この記号を読み解くことさえ当時の自分は難儀な思いをしていました。

『▲45歩』のうち、▲は先手の手を意味しており、△は後手の手を意味しています。次の4という数字は、将棋盤の右端から数えて4列目という意味です。次の5という数字は、将棋盤の上から数えて5段目という意味です。先手を下に後手を上に並べています。

こうやって駒を置く升目を特定しています。これを記号を見て盤面にイメージするのは、最初の内はかなり苦痛で、これが慣れるまでが大変なんです。この記号に慣れないうちは、本を読んで目にするだけで、眠気が襲ってきます。このことは夜眠る前に将棋の本を読むと眠れるというメリットもありますが。(笑)

自分は、今でも夜眠れないときは将棋の定跡書を読みます。すると不思議なもので、羊が一匹、二匹、・・・って数えるのと同じような効果が出てきます。お試しあれ!

 
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自陣角。・・・かっこいい❤

さて、▲45歩と突くと、その下の46の地点に空間ができます。この空いた▲46のスペースに持ち駒の角を打つのです。

「自陣角」と表現されていました。



↑46に打った角が自陣角。

この角の意味は当時は全く分かっていません。しかし、鮮烈な印象を受けたことは確かなんです。

その理由を後付けですが表現するとすれば、角の印象が今まで悪かったということがあげられると思います。いままでは『飛車こそ攻めの要である』と思っていて、同じ大駒のくせに角は無用の長物とさえ思っていたところがありました。

棒銀戦法を指しまくっていた頃、角の頭を目掛けてくる相手の銀を撃退するのに苦労してきたことから、角はあるだけ弱点になるので意味のない駒、むしろ守りに邪魔な駒、という印象をもっていたのですね。

その捨ててしまいたくなるような角が、この本では何と『自陣角』、文字で書いてもカッコいいですが、音にしてみても『じじんかく』、かっこいいです。響きがいいんですよね。

 

将棋から学ぶこと

「人はギャップに弱い」と言います。例えばこれまで嫌いで嫌いで仕方がなかったものが、たった一つの想像できないような良い面を見たりすると、評価が180度逆転してしまうことがあるということでした。

人間関係に照らしてみても、普段嫌いで嫌いで仕方がなかった人物が、それが単なる噂や、何かの誤解が原因でそうなっていただけだったのが、実際に話をして見てそうではなくて、かえって良かったりすると、今までと正反対に評価が変わり好きになったりした経験はありませんか?

このギャップを、自陣角を見て経験しました。

角が大好きな駒に変わりました。

 

その延長戦上に思い至ったことですが、もしかしたら、普段の生活の中で、嫌いなものの中に、実はものすごく好きになれそうなものがあるのかもしれないと思いました。そう考えると嫌いだから切り捨ててしまうというのが本当にもったいないのではないかなって思いました。

愛の反対の言葉は憎しみではないという話を聞いたことがあります。では何なのか?

「無関心」だそうです。

切り捨ててしまう前に、別の角度からもう一度見直してみるということは、実は、将棋から教わったことですが、将棋を離れて実生活の中でも共通することなのかもしれません。

将棋からはそういう気付きも与えてもらえます。本当に素晴らしいです。将棋は。

 

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