藤井聡太七段19連勝目前にて及ばず。自陣の3段目に桂馬を打つ腰の入った攻め。



歴史的注目の一戦

2019年2月5日、順位戦の藤井聡太 七段 vs. 近藤誠也 五段戦です。この対局は、藤井七段とその師匠である杉本昌隆七段が、同時にB級2組に昇級できるかとして注目された一番です。テレビでもかなり騒がれましたので、将棋を知らない人でも知っている方が多いのではないでしょうか。

これには藤井七段の順位戦での連勝記録が18連勝中であり、これは歴代1位に並ぶ記録であり、あと一勝で19連勝となれば、記録を更新するという対局でもありました。この一番は、そういう意味で、歴史的一戦と言えると思います。
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藤井七段の先手角替わり

さて、棋譜を掲載すると、下記のようになります。この対局の中で、自分がとても注目したい局面をいくつか記事にできればと思います。読者のあなたもぜひ一緒に考えていただければと思います。まず①の局面です。

▲2六歩 △8四歩 ▲7六歩 △3二金 ▲2五歩 △8五歩
▲7七角 △3四歩 ▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲4八銀 △3三銀 ▲3六歩 △6二銀 ▲7八金 △6四歩
▲4六歩 △6三銀 ▲6八玉 △4二玉 ▲4七銀 △7四歩
▲9六歩 △9四歩 ▲3七桂 △1四歩 ▲1六歩 △7三桂
▲4八金 △6二金 ▲2九飛 △8一飛 ▲6六歩 △5四銀
▲5六銀 △6三銀 ▲6九玉 △4一玉 ▲7九玉 △5二玉
▲8八玉 △4二玉・・・①


この局面は、とても間合いをはかっていて実戦の呼吸みたいなものを感じました。なんせ玉を囲うために、何手も一見無駄な手を積み重ねているように見えるからです。

例えば、▲68玉から▲88玉へ移動するために、▲79玉▲88玉と二手で行けるのに、わざと▲69玉▲79玉▲88玉と寄り道をして囲っています。

後手も、△41玉△52玉△42玉と隙を作らないように待っているようでした。先手とすれば、▲88玉と囲ってから攻めることができるならば盤石の構図と思われます。

自陣角!遠見の角の出現。藤井七段の将棋は自陣角が多い説

<続きの棋譜>

▲4五桂 △2二銀 ▲3五歩 △同 歩
▲6五歩 △同 歩 ▲5五銀 △3三桂 ▲1八角・・・②


次に②の局面です。私は自陣角が好きです。遠見の角と呼ばれる▲18角が出現しました。藤井七段の将棋には自陣角が出現する確率が高いと思うのは私だけでしょうか。『この角が働けば勝ち』まさに命運を託された角が盤上に打ちおろされたという感じです。

この手の狙いは、▲63角成△同金▲72銀、の飛車金両取りですね。桂馬の陰に角の効きが隠れていますが、桂馬を成り捨ててこの筋が実現すればかなりの脅威です。怖いですね。
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近藤五段いぶし銀の受け

<続きの棋譜>

△8二飛
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △8六歩 ▲同 銀 △2三金
▲6四歩 △5二銀 ▲3三桂成 △同 玉 ▲2九飛 △2四歩
▲4五角 △9五歩 ▲同 歩 △4四歩 ▲2三角成・・・③


次に③の局面です。飛車を浮いてその筋を受けます。この先受けが何とも言えずにいぶし銀の手に感じました。

飛車は大駒なので、大きく動かすのが自然に見える中、わずか一手浮いただけ。しかし、角筋から飛車を逸らして、二段目に飛車の守りを効かせる手として見ると、何とも言えない味の良さというのでしょうか、不思議です。

先手は飛車先の歩交換をしながら、その瞬間の飛車の横効きを利用して▲64とくさびの歩を打ちます。この手で銀を逃げずに飛車を取ると、それこそ、▲18角の遠見の角が稲妻のような威力を発揮してきます。

飛車を最下段に一旦引きましたが、これも後手を引いていないのがすごいところです。▲24歩を打たれると大変なので、後手は先に△24歩と受けます。さてここで先手ははどう攻めを継続するか?

▲45角ですが、▲64歩の拠点を作ったことに満足して、2筋に狙いを定めます。この角、何となく、帰りの燃料を積んで無い気がするのは気のせいでしょうか。

案の定、▲23角成として金とさし違えました。これを角金交換の駒損と見るか、▲64歩のくさびを入れたこと+金を角と交換したと見るか、私は、先手がこの後2筋からの集中砲火を敢行することから思うと、後手の右辺の駒を足止めさせて置いたことの利が大きいと考えているのでは、と感じました。

 

三段目の桂馬打ち。腰の入った攻め!

<続きの棋譜>

△同 玉
▲4五歩 △8四桂 ▲7七銀 △8五桂 ▲4七桂・・・④


角成を同玉と取りました。顔面受けな感じの手です。確かに次の▲45歩を突いた手を見ると、△33玉の位置では、圧力が半端ではありません。なので、△23玉と取ったのでしょうが、どんどん右辺の守り駒と離れて行くところに、不安を禁じ得ません。

後手は、守りに適した駒を持っていないため、玉のまわりに駒を打って守備陣を再構築しようとしてもできません。ここで後手の反撃の一手とも言えるじっと△84桂馬が、「このように指すものですか」と目から鱗でした。

守備が効かないなら攻めるしかないのです。それは単純なことなのですが、じっと攻め駒を配置するということが難しいと思います。この84の桂馬は急所中の急所だと思います。

後手が△85桂と桂馬で銀取りをかけた局面。この手に対して先手が指した手もじっと控えて打った▲47桂馬でした。この桂馬を見てふと思い出したことがあります。米長邦夫先生が、昔、「腰の入った攻めとは自陣の3段目に桂馬を打ち・・・」と語られていたことを思い出しました。

まさに腰の入った攻めという感じです。▲29の飛車、▲55の銀、▲47の桂、持ち駒の金。この4枚が攻めに参加していく予定でしょうが、4枚の攻めは切れません。いよいよ終盤の殴り合いに突入、今その風雲急を告げる局面です。

 

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