相矢倉ならぬ相雁木。中学生プロ棋士の先輩渡辺明棋王に挑む藤井聡太七段朝日杯連覇をかける。



将棋界屈指の好カード

2019年2月16日に行われた朝日杯将棋オープン戦の決勝対局です。渡辺明棋王 対 藤井聡太 七段です。

渡辺棋王と言えば、藤井七段の前の中学生プロ棋士です。羽生さんとの世代交代となるべき棋士の代表格と目されていました。

竜王戦で永世竜王をかけて熱戦を繰り広げたのは有名な話です。

今回、朝日杯の決勝で、当たるべくして当たったとも言えましょうが、ファンにとっては注目の一局です。藤井七段にとっては連覇がかかっています。
Sponsored Links

相矢倉ならぬ相雁木

▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7六歩 △3二金
▲7七角 △3四歩 ▲6六歩 △3三角 ▲6八銀 △4二銀
▲4八銀 △6二銀 ▲7八金 △4四歩 ▲5八金 △7四歩
▲6七銀 △4三銀 ▲3六歩 △5二金 ▲6八玉 △7三桂
▲9六歩 △9四歩 ▲4六歩 △1四歩 ▲1六歩 △4一玉
▲7九玉 △6四歩 ▲3七銀


いきなり序盤をすっとびまして、駒組みがある程度整ったところです。相雁木ってこれまで矢倉ばかりを並べてきた私にとってはかなり新鮮です。しかも華々しいタイトルがかかった決勝戦で、しかも、対局者はこのゴールデンカードです。

定跡を作りだしそうな一局に成る予感が漂っています。5筋を突かないで、▲56銀や、△54銀の腰掛銀の余地を残しつつ、駒組みを進めていき、玉の囲いが矢倉のようにぎっちり囲わない点が私には違和感があります。

雁木自体、飛車先の歩交換を防いでいる駒が角なので、将来的に角の頭を攻められるので、矢倉のように▲88玉や△22角と囲うのは、返って危険地帯に近づく意味が強いのでしょうね。

先手の攻めの銀が、動きだしました。この銀の動きを見て、後手は囲いに近づくかどうかすら警戒している感があります。角が飛車先の歩交換を防いでいると同時に1筋にも効いているので、簡単に棒銀で端を攻める展開にはならなそうですが。

棒銀で角頭を狙う先手。角の頭はいつでも急所

△6三銀 ▲2六銀 △5四銀右 ▲3五歩 △4五歩


いよいよ銀が棒銀に出てきました。後手もそれに呼応して△54銀と守りに活用します。5筋を突かないで54に出る余地を残した理由がこの辺にもありそうです。

銀が攻めてくる場所は、矢倉ならば端と行きたいところですが、角の守りもありますが、何より玉が遠いです。なので、▲35歩と攻めにでますが、後手は角筋を通して、攻められている角の捌きを狙います。

振り飛車では常套手段の角の捌きですが、相居飛車戦ではどうなるのでしょうか。
Sponsored Links

角の戦い!攻めの銀を牽制

▲同 歩 △5五角 ▲3七銀 △3五歩 ▲5六歩 △3三角 ▲4六銀
△3四銀 ▲7五歩 △8四飛 ▲2四歩 △同 歩 ▲6五歩


△55角と出て、飛車取りをかけて、先手の攻めの銀を引かせます。一歩先に損しましたが、△35歩と悠々と取り返して、次に△36歩の銀取りを見せます。もし△36歩に同銀は飛車が素抜かれてしまいますので、そうなる前に▲56歩と角をどかして、飛車に対する睨みを消します。

手順に▲46銀と出て▲35銀と前進するように駒が活用できたので、先手にとって調子のよい展開かなとも思います。何より銀が▲26から▲46に移動してきて、攻めの場所が後手玉に間接的にではありますが近づいています。

攻めの手番を先手が握っているのも大きいです。▲75歩と飛車を浮かせておいたのは、5筋の歩がついていないので、▲71角とかの筋よりも、飛車を狙いやすいといった意味と、居飛車で最後の砦となる飛車の2段目の横効きを消す意味があるのだと思います。

▲24歩と突き捨てを入れたのは、何かの時の△13角などで王手を狙われないようにした意味と、2筋に歩が効くようにしたことでしょう。先手は眠っていた角に喝を入れるべく▲65歩です。角同士が睨みあうのはかなり緊張感があります。

2つの位を取る先手。じっと飛車を寄る後手。

△同 歩 ▲5五歩 △6三銀 ▲7四歩 △同 飛 ▲7六歩 △8四飛


△65同歩。この手は、後で見ると、とても飛車の横効きが通って気持ちが良いです。また6筋に伸びた歩の圧力は地味ですが、先手玉に与えるプレッシャーが後で大きくなるような感じがします。

角交換を挑むのかなと思っていたら、▲55歩と角筋を遮断しながら、後手の銀を追い返して、先手の5筋と4筋の位も堂々たるものです。

7筋の歩がぶつかっていたのを忘れていた感がありますが、ここで、7筋を整理します。▲76歩に対してじっと△84飛車と寄った手が印象的でした。

私なりに解釈するには、将来銀交換になった後の75銀打ちで飛車が殺されるのをあらかじめ回避しておいた手と思います。

先手、銀を使い倒す。後手、銀を好所に据える。

▲3八飛 △7五歩▲3五銀 △同 銀 ▲同 飛 △7六歩 ▲8八角 △3四歩
▲3六飛 △7五銀

 先手はいよいよ銀交換を狙って飛車を一筋寄ります。▲35に出ようとして追い返されて、待望の銀出です。でも、5筋の位を取ったり、4筋の位を守ったり、この銀は交換するには惜しい銀ですが、ここまで盤上で働かせてから交換するというのが駒を使い倒している感じがしてすごいです。

後手の△75歩が不思議な手です。単位▲同歩と取られたら何があったのかなって思うのですが、これは75に何か銀でも打たれるのが厭だったのでしょうか。

手を追うと何となくですが、後手はこの75の地点を重要視している感じがします。実際に後手は△75銀と打ちました。この銀を打った局面から、攻め手が先手から後手に交代するような気配を感じます。

まとめ

この局面を見て思うのは、飛車に注目すると先手も後手も飛車の横効きがきれいに通っていることです。角に注目すると何となく先手の方が窮屈で狙われている感じがします。

また▲55歩が負担になっており、銀交換したことで、その支えの駒が角一枚になってしまい、後手の角攻めの結果によっては、あとで後手から△55角と大活躍されてしまいかねません。

その他の攻め駒に注目すると、先手の攻めの桂馬がまだ働いていないことです。対して後手の攻めの銀も63に残ったままなので、あまりどちらがいいと評価はできませんが、後手玉の41の位置が、妙に安定して見えるので、仮に63の地点にいる銀がこのまま残ったままだとしても、守りの銀として活用が見込める感じがします。

続きは次回に。チャオ!

前の記事:藤井聡太七段19連勝ならず。近藤五段の華麗な寄せ。二枚の馬の強力な破壊力。

次の記事:相雁木は居角の戦い。角頭の攻防戦の行方やいかに。渡辺明棋王vs藤井聡太七段朝日杯決勝。

棋譜一覧表を表示する

藤井聡太七段の棋譜並べ。玉頭の戦い。終盤の驚愕の一手!』に戻る

Sponsored Links