増田康宏の美濃囲いの急所を攻める藤井聡太のスピード満点の桂馬跳ね



先手に、「攻めて来い!」

前回までの局面を再度掲載します。後手が△43歩と受けた局面です。この歩は単に傷を消した手のように見えますが、ただそれだけの手ではなく、先手に手を渡したという意味もあります。「先手に攻めて来い」と言っています。

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連続した受けの歩打ちに見る老獪な指し回し

▲6五歩 △5四歩

先手は55角を狙いにして▲65歩と飛車のこびんをこじ開けに行きます。この手に対して△同歩は▲55角打ちが見えています。しかし後手は地味に△54歩です。

すごく地味な感じもしますが、受けるべきところを受けていて重厚な感じを受けます。この歩は、▲55角だけでなく、▲59飛車の直射も受けています。単に△54歩と受けただけでは驚きません。その前に指した手が△43歩なのがすごさだと思います。

2手続けて地味な手。『一手前に受けよ』。何十年も年輪をたくわえた大樹のような印象の手です。簡単には倒れません、と。高校生なのに、何十年も経験してきたような老獪な手とでも言えましょうか。

と金攻めを狙う先手

▲6四歩 △同 金 ▲5六銀 △7三桂
▲4六角 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲6二歩

▲64歩から金を釣り出して、▲56銀と活用します。後手も攻め駒の活用を図り△73桂馬。先手は、やはりここが急所なのでしょうか、▲46角の自陣角です。

私は自陣角が好きなのですが、この好所の角打ちは自陣角ファンにとってはかなり幸せな角打ちです。

後手は飛車の活用を図りますが、▲62歩と”と金”作りを狙います。この歩は取れません。角で△64金が取られてしまいます。

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後手、攻め駒を呼び込む

△6五桂▲6一歩成 △5五歩

△55歩がすごい手ですね。この歩は同銀と取れば、角も銀も一気に捌けます。先手にとってはいいことづくめです。と金も作れていますので、後手は攻めを急がなければならないところです。

▲同 銀 △5八歩

▲55銀と歩を取らせて、△58歩と打ちます。この歩は取ると、△89飛車成りがありますので、取れないところです。

仮に△89飛車成とさせて、▲79金と先手を取りにいっても、△57歩と飛車取りに打たれてしまい、飛車が逃げると▲79金に紐付いた角の効きも遮断されてしまっているので、▲79金がボロっと取られてしまうおそれがあります。

スピード感満点の△57桂不成

▲7九飛 △7六飛
▲5一と △5七角 ▲同 角 △同桂不成

▲79飛車と逃げて、△76飛車と寄った手は、遠く▲46角を睨んでいます。この手は、▲64銀と出る手を牽制しています。というのは、

▲64銀△46飛車▲53銀成△同銀、でどうでしょうか。

先手はせっかく作ったと金を活用しない手はありません。▲51と金と寄ります。△51同銀と取らせれば、先ほどの変化に成った時、▲53成銀が取りかえされません。

しかし、△57角と畳みかけてきます。これに対して▲57同角とし、△57同桂不成がスピード重視のすごい手です。先手は▲49金が逃げると、せっかく出た▲55銀がタダで取られてしまいます。

このあたり、先手が攻めてたはずなのに、後手に逆用されている感じです。

 

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