羽生永世竜王誕生の竜王戦第一局
羽生さんが永世竜王となった、平成最後の名勝負と言われるであろう平成29年10月20日の竜王戦第1局を将棋盤で並べてみた。やはり名勝負を実際に盤に並べてみて盤面を見ると一味も二味も違って、趣がある。
ちなみに羽生さんの永世竜王になる過程をダイジェストで放送していて、谷川さんとのツーショットが印象的だったことについては『 羽生永世竜王の谷川先生に対する謙虚な姿勢が素晴らしい。』に書きましたの興味のある方は読んでやってください。
先手が羽生さんで後手は渡辺さんです。
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金
▲3八銀 △7二銀 ▲5八玉 △1四歩 ▲1六歩 △9四歩
▲9六歩
この局面まで先手も後手も両方、飛車先の歩を交換しに行かないのが、すごく不自然に感じました。雁木流行の風潮なのだろうか、飛車先の歩交換の常識が変わりつつあるように感じるのは私だけだろうか?
△8六歩▲同 歩 △同 飛 ▲8七歩 △8四飛
この時点で先手の飛車先歩交換ができなくなってしまったじゃないか。なんか損した気分。(-_-;)
▲3六歩 △3四歩 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩
結局、先手も飛車先の歩を交換できたのでよかったです。(#^.^#)
飛車の引き場所は・・・なんと、
5段目の飛車
▲2五飛
飛車を5段目に引くのは横歩取りだけだと思っていた自分の時代遅れ感にびっくり。
飛車先の歩交換にこだわらなければ、というか結局飛車先の歩交換はされてしまうのだから、最初から4段目とかにこだわる必要はなく、引き場所は自由だーーー!という意識革命。
△6四歩 ▲7六歩 △6三銀 ▲2四歩 △同 歩
また普通に駒組みかと思われた刹那、再び飛車先の交換?
▲同 飛 △8二飛 ▲3四飛 △3三角
ここで横歩を取りますか?取ると何かいいことあるんですか?と聞きたい気持なのですが、28歩で桂馬が殺されたり、28に角を打ちこまれたり、大丈夫ですか?何もないから大丈夫なんでしょうね。
突き捨ててから跳ねる!
▲1五歩 △同 歩▲3七桂
こういう順番で駒を動かすんでしょうね。つき捨ててから跳ねる、という呼吸。最初のころだと、端歩がどんどん伸びてきてと金になって、”いやーっ”て気持ちになるのですが。
△2二銀 ▲3五飛△3四歩
なんか飛車が狭い感じ。こうやって歩をとらせて飛車を生捕ろうという狙いが見え隠れ。
▲2五飛
虎口を逃れるがごとく、毒まんじゅうは食しません。致しません!by大門未知子
△2四歩▲3三角成 △同 銀 ▲2九飛
ここも抜け目ない角交換です。ここ単に後からだと、例えば23銀と上がられてからだと、桂馬でとられてしまいます。今なら、飛車で24の歩を取られてしまうので、銀でとるよりありません。
まさか金でとるのは形的にありますまい。(偏見)
継ぎ歩の攻め
△5四銀 ▲2五歩 △1六歩
この端歩突きを見て私的には少し焦る感じです。端歩間に合うの?え、ほんとに突き捨てないほうがよかった感じ?こんな不安抱いたのは私だけ?
▲2四歩 △1七歩成 ▲同 香 △同香成 ▲2三歩成 △2七歩▲3二と
やはり行きますよね。斬り合い的に突き進み、飛車が取られそう。
私、32とを同飛車と取られたらどうするの?って考えました。どうせ飛車詰むんだから28歩成りは後回しでもいいのでは?
でも、よーく考えてみました。すると、飛車死なないんです。ここで28歩成り指さないと、飛車取れないんです!
で△2八歩成 ▲3三と △同 桂
と進みました。
端角!
一段落したらやっぱと金が大きいのではないか?って心配になりましたが、
▲1五角
継続手段がなければ嘘ですね。
△2九と▲3三角成 △6二玉 ▲7五桂
極端に後手玉が狭くなった気がします。寄せの挟撃態勢が整った感じです。
△7四角
ここは7二角という手もあったようです。というのは、おそらく、5四と4五に効きが通るからだと思われます。ただ、玉の逃げ道がふさがるようで自分なら指せません。
▲5五銀 △同 銀▲同 馬△2八と
悠然とした馬
と金が迫ってくるようで怖いですが
▲6四馬
この悠然と馬が一マス動いただけでなんともゆっくりした感が否めないのですが、これがすごい厳しい一手でした。もし6三歩とかで防いでも、角を取ってから8三銀で飛車が取れます。
△3八と▲63銀
ここで ▲6三銀が入ったのが大きいと思いました。この銀が入ったことで、かなり、後手玉が危険になった感じがします。
△5一玉
▲3八金
ここで悠然と自玉に手を戻すのですね、そういう呼吸なのですね。
△9二角▲4五桂
この桂馬働くと思いませんでした。すごい跳躍。
たった一歩が重たい!
△4一玉 ▲2四歩
この歩がこの一局を並べていて記憶に残った手でした。たった一歩なのに、存在感が半端ない。打たれてすぐにでも飛車で抜かれる軽い歩と思っていたのですが、全然。
盤を反対にしてみたら、とても重たい歩。これを打たれて、飛車で抜けなければ、もう投了、といった感じの歩でした。すごい。
△2九飛
やはり抜きにかかったか、と思いました。
しかし、抜けなかったんです。
退路を防ぐ強烈な金打ち!
▲5三桂不成△3二玉 ▲2三金
歩に玉を近づけて金を打ち、手順に歩を守る。鮮やか。
△2一玉 ▲6一桂成 △6九銀
▲6八玉 △4九飛成
かなり怖い。詰まされそう。
▲3一金 △1一玉 ▲1二歩 △同 飛▲5五馬
この馬が最後まで働いた。まさしく八方睨み。
△2二歩 ▲1三歩 △3八龍 ▲7七玉
ここまでで羽生さんが制しました。
最後に投了図の盤面を美しく撮影してみました。天王山の馬が自玉を守りつつ敵玉を睨む。かっこいいでしょ。
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