戦意を喪失させる究極の受け『入玉』。ついに完結!受けつぶしの図。



大山康晴15世名人の受けを学ぶ

攻められていると、もしかしたらもうダメなのかもって心の中に心配がよぎると思います。そんな時、反撃に出たりして、ちぐはぐなことをしてしまって、余計にダメにしてしまったり・・・。

『守るのは攻めるのよりも難しい』というのは、そういう心理面でのことも大きく関係するのだと思います。攻める方は、攻めが成功すれば勝ちですが、守る方は、一手でも間違えれば玉を取られてしまいます。

精神的に相当なプレッシャーだと思います。

今でも受けの大名人といえば、大山康晴十五世名人です。亡くなられたあともその影響力は絶大です。その大山名人の棋譜を、特に後手矢倉の棋譜を勉強しています。

東海の鬼の異名で恐れられた花村先生との対局で、先手花村先生、後手大山名人です。今回はその7回目です。1回目は『将棋を強くなりたい!受けの基本は大山康晴名人の実戦の棋譜から学ぶ』に、2回目は『将棋名人戦の相矢倉。先手、攻めの理想形対後手、一手前の周到な受け!』に、3回目は『勝負に勝つため、勇気と忍耐が必要な待つことの大切さを歴史に学ぶ!』に、4回目は『金銀4枚の矢倉の陣形!継ぎ歩をどう受ける?激しい矢倉攻城戦始まる!』に、5回目は『将棋の極意とは?受けつぶして勝て!飛車の侵入を許す大胆な受け。』に、6回目は『守りの最後の手段、最強の受け入玉を目指す。迫り来る一間龍の恐怖!』に書いていますのでよろしかったらそちらもお読みください。

前回の局面を再度掲載します。

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遊び駒を強力な守り駒にする受け

△3五歩 ▲4五銀 △3七玉▲3九歩

先手の持ち駒を見ると、金2枚に銀が1枚。これを自陣の一段目に置けば、もはや後手の入玉は困難です。今先手陣内に居るこの馬がその手を全て防いでいます。この馬、ずっと前に成りこんで、△38馬と先手の47の金取りをしてからずっと動いていません。

悪い言い方をすれば全く遊んでしまっていた駒でした。この駒が俄かに輝きを増してきたのが不思議です。馬が働いたというよりも、馬に向かって玉が近づいてきた、馬を働かせるために玉が自ら近づいてきた、そんな風に考えると、駒を働かせるということは、何も、働かせたい駒を動かすだけが手段ではないことに気付かされます。

遊び駒が、強力な守り駒になった、これもまた受けですね。

そこで先手はこの馬をどかさないことにはどうしようもありません。なんせ馬の守りは金銀3枚分と言われます。

この馬をどうにかするために▲39歩と打ちました。さて後手はこれを取るとどうなるのでしょうか?

後手玉の逃げ道を限定する

△3九同馬 ▲3五龍 △2八玉 ▲1八金

後手は△39同馬と取りました。この手の意味は難しくて分かりませんが、おそらく玉の逃げ道を△48玉と行かせないためだと思います。というのは、仮に△48玉だと、▲59金△同玉▲39龍以下詰んでしまいます。この時、馬の位置が△38馬だと▲59金の時、△39玉と入ることができます。

なので、△39馬とさせることで、後手の逃げ道は、2筋に限定されてしまいました。今先手陣の駒の中で最も頼りの駒は、▲19の香車ですが、この香車に近いところに玉を追い込めば王様を詰ますことができる、そう判断してのことだと思います。

実際に、この▲18金と先手が打った局面は、玉の逃げ道が29の地点しかありません。この位置は、果たして後手玉の墓穴となるのか・・・。私には、もう完全に後手玉が生きた心地がしません。

墓穴から這い出た玉

△2九玉 ▲2六龍 △3八玉

▲26龍で終わった・・・って思ったら、なんともう一回△38玉。後手は28に何か駒を打つのでは?って思っていたら、再度、墓穴のような29から脱出しました。一瞬さっきよりも玉が龍に近いので、脱出する手はかえって危険だと思っていたので意外でした。

因みに後手が△28に何か駒を打つと、▲49金と打たれて危険だと思いました。同馬なら▲28龍で詰むので27に桂馬とか打つのでしょうが、馬を取られると、後手は強力な守り駒が盤上から消えるのでその分危険になりますし、仮に先手も後手も入玉して持将棋となった場合に、駒数の計算にも影響してくるので、勝負が難しくなります。

それにしても、38の地点にもう一度戻るというのが、意外でした。凄い・・・。これは、先手に▲18金と、金を打たせていることも大きな理由であると思います。龍が2筋に寄ったことで、今度こそ、△48玉からの逃げ道が開いてきそうです。

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ここで逃がしたら終わり?!

▲5九金 △3七金▲3六銀 △2五桂 ▲2七銀 △2九玉

▲59金と先手が指したのは、後手玉の48からの逃走経路を塞ぐ手です。玉は包むように寄せよの格言通りです。これに対して、後手は手厚く△37金と守ります。これも一手前に受けよの格言通りです。

先手はいかんせん、持ち駒がないので、盤上の駒を活用するしかありません。▲36銀と活用してきますが、後手玉は再度手厚く△25桂馬と守備駒を増やします。25桂馬と金に紐をつけて、守り駒を強くしたのには、桂馬ならば先手に渡しても、入玉した玉に脅威にならないからです。王手に桂馬を打つには、少なくても後手玉は3段目以上に居なくてはなりません。

先手の手に乗じて、後手は再度、△29玉と潜ります。この時点ではすでにこの位置は墓穴ではなく安全地帯なのですね。

金を二枚使い果した先手の攻めに息切れ感がしてきました。

根本の龍を責める後手

▲3六銀 △2八銀 ▲3八歩 △5三角

36銀の開き王手に対して、今度はガッチリ△28銀と受けました。後手の駒の連結がすごいです。その連結を切り崩すために、▲38歩と打っていきます。

後手は同金と取ってなんでもないようですが、単に受けるだけの手ではなくて、△53角と龍に狙いをつけました。この手がすごいなって思った手です。普通は金を逃げるでしょう。

▲37龍とされれば先手は龍と、金・桂馬の二枚換えになって得です。しかし先述したように桂馬では、もらっても王手ができないので得になっていません。

この、▲38歩の金取りを放置して、△53角の龍取りというのが参考になります。

執拗に龍を責める受け!

▲3五銀 △3四桂▲1五龍 △3五角 ▲3七歩

この龍取りに打たれた角に対して先手はどう対処するのか、持ち駒が歩しかありませんし、ちょうど歩を38に打ったばかりで、歩が打てません。なので▲35銀と銀で受けざるを得ません。

後手はなおも龍取りに34桂馬と打ちました。執拗に龍を責め立てます。これは、先手の攻めの主軸が龍だということで、この龍さえ封じ込めてしまえばよいと言うことなんですね。

先手は我慢出来ずに龍を逃げました。その結果後手は△35角と銀をとりました。対して、先手は37歩と金を取りました。この取引きだけを見ると金銀交換なので駒の損得はありませんが、戦線から先手の龍が逸れたことがとても大きいです。

更に龍をとことんまで追い詰める後手

△1四歩 ▲3六歩 △1五歩 ▲3五歩 △2六桂 ▲投了

まで138手で後手の勝ち

後手玉も安全になり、ようやく局面が落ち着いたと思われる局面で、後手が指した手は、なんと、またしても龍取りです。良く見ると△14歩と端歩を突かれて龍は逃げ道がありません。

仕方なく▲36歩と角と差し違えます。角と龍の交換はどう考えても、先手にとって不本意です。

そして▲35歩と34の桂馬取りになっていますが、後手はこの取られそうな34桂馬を△26桂馬と跳ねて、18の金取りです。先手は18の金まで取られてしまいそうで、後手玉にとってこれ以上の安全はありません。

もはや後手玉に詰みはありません。

ここで先手は投了します。

まさしく受け潰しの図です。

先手は、手付かずで残っていますが攻めの要となる駒が全て粉砕されてしまいました。こうなると、後手は攻めだけに専念すれば良く、しかも、持ち駒は豊富にあります。先手としては投了もやむなしと言ったところです。

すさまじい、の一言です。

まとめ

大山康晴名人対花村元司先生の棋譜を並べました。とても勉強になることが多いです。後手矢倉を持った大山名人が、どのように先手の攻めを受け潰していくのか、その手順をあらためて思い起こすと、やはり先手の攻め駒を責める手が多く思います。

最後の方では、後手は、先手の玉を相手にするのではなく、ほぼ先手の龍を相手にしています。龍だけを狙った手順は、先手にとって龍が攻めの主力であり、これが取られたら先手の戦意が大きく喪失することを見越しています。

それにしても、入玉するまでとしてからの指し回しが凄まじいとしか言いようがありません。投了図は、先手玉を攻略したのではなく、先手の攻撃陣を攻略した、という図です。まさに受け潰しですね。

最後までお読みくださりありがとうございました。これからも気になる棋譜を掲載して、ああでもない、こうでもないと、試行錯誤の跡を記事にしていきますのでどうぞよろしくお願いします。

追伸

将棋のおもしろさを伝えたい、そんな思いから、少しでも将棋の普及に貢献できれば幸いです。将棋を指して楽しい時間を過ごしましょう!座ってばかりで体を動かしたくなったら、ゴルフがおススメです。ゴルフは息の長いスポーツで将棋ととても似ています。人生を楽しく過ごすのに将棋とゴルフは最高です(^◇^)!

他にも将棋の棋譜を並べていますのでよろしかったらこちらをどうぞ。

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