『存分に攻めてきなさい!』そんな余裕を感じさせる受けの一手



先手、好形で後手の隙を待つ!

大山康晴十五世名人の後手矢倉から受けの技術を学びとる、そんな思いで棋譜を並べています。棋譜は、戦後間もなくの頃、1952年に行われた対局で、先手が塚田正夫先生、後手が大山康晴先生です。

しかし予想に反して、後手の攻め、先手の受けという流れになって、現在の局面に至ります。陣形を整備して、相手の攻めに備える呼吸、これこそ、大山流と思っていた手ですが、指したのは先手の塚田先生です。

大山先生の歩んできた戦歴の中に、最強の受けを育んだ強敵がいたことを思わされます。

この棋譜は1回目は『絶対王者木村義雄十四世名人からはじめて棋界最高の名人位を奪った男』に、2回目は『鶴翼対魚鱗の陣形!戦国時代の合戦の布陣が将棋の局面を通して蘇る。』に、3回目は『戦後間もなくの棋譜を楽しむ。矢倉は本当に終わったのか?』に書いていて今回は4回目です。前回までの局面を再度掲載します。

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先手、必殺銀ばさみ!

△7三桂 ▲2六角 △5三銀 ▲4五歩 △同 銀 ▲5五歩

後手は△73桂馬と桂馬を攻めに参加させます。先手は、▲26角と角を53の地点に効かせます。一度▲37角と途中下車した角ですが、後手の攻めが一旦治まったと見るや、再度動いて26の地点です。

この位置の角は、最近の棋譜ではあまり見かけません。でもこの角はきれいですね。次に▲37桂馬と跳ねると、攻めの理想形です。次に▲35歩△同歩▲同角と歩を交換してからの▲36銀が実現すると後手はたいへんです。

後手が△53銀と引いた時に、▲45歩と伸ばしたのが、秀逸な一手です。タダの歩なんですよね。▲37桂馬を跳ねてからなら分かるのですが、次に後手に△44銀とされると眠っていた△42角が働いてきます。

タダの歩なので、とりたいところです。『タダより高いものはない』とおばあちゃんに教わりましたが、どうでしょうか?

先手の▲55歩で、後手の△45銀が『銀ばさみ』の形になってしまいました。このまま▲37桂馬と跳ねられると銀を取られてしまいます。

銀桂交換から飛車の大捌き!

△4四銀 ▲3七桂 △5五飛 ▲4五桂 △同 飛 ▲5六銀

後手はは△44銀と出ました。銀桂交換は仕方なし、というところですが、▲37桂馬△55飛車で、飛車をおおきく捌きます。▲45桂に、△同飛車と桂馬を取り、▲56銀打ちと、先手はがっちり受けました。

この瞬間、後手の飛車は捕まってしまったように見えましたが、1か所だけ逃げ場所がありました。

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どちらが得した?

△2五飛▲3七角 △2八飛成 ▲同 角

後手の飛車が△25飛車と逃げました。ここしかないという逃げ場所です。この飛車の位置、とても危険です。角が先手で王手でもされたら、飛車が素抜かれてしまいます。この局面は大丈夫ですが、飛車と飛車が角を間にはさんで向かい合った時は、非常に危険です。

先手は▲37角と飛車交換を強要します。うかうかしていると、後手から△64角と出られて大変です。飛車交換に後手は応じましたが、▲28同角となった局面はどうでしょうか?

駒の損得で言えば、先手が銀桂交換で駒得に見えますが、歩を損していて、しかも先手は歩切れです。『二枚換えなら歩ともせよ』の格言で言えば、後手の方が得しています。

飛車交換した後の陣形の強弱で言えば、『一段金に飛車捨てあり』と言われるくらい、陣形が低いのは飛車の攻めに強いです。後手の陣形は一段金ですが、先手の陣形は、方矢倉の堅陣です。

手番については、先手の▲28角が後手の△73桂馬取りになっています。

さて、この後どうなるでしょうか?

追伸

『相手の攻めを待つ』ってカッコイイですね。前回の局面で先手が指した▲68金寄はかなり私的にはかっこいい手です。

難しいことはわかりませんが、この金寄があったから、飛車交換の選択肢も生まれたのだと思います。

『存分に攻めてきなさい!』そんな言葉が聞こえてきそうな一手です。

他にも棋譜を並べています。よろしければご覧くださいませ。→棋譜一覧

あなたの将棋ライフが楽しいものでありますように!(^◇^)!

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