受けの将棋を学ぶ 大山流の受けのルーツは塚田正夫九段にあり



逃げ切れれば後手の勝ち?

受け将棋は、『受け切れれば勝ち』と言うものであることから、攻め手にすれば『寄せ切れれば勝ち』ということになります。

『どちらを持ちたいか?』そう言われれば攻める方を選びたくなるのが人情かもしれません。しかし、受け切るということもやって見ると面白いのかもしれません。

相手の逃げ道を全て封鎖するのもたいへんなものです。いよいよ最終局面です。

大山康晴十五世名人の後手矢倉から受けの技術を学びとる、そんな思いで棋譜を並べています。棋譜は、戦後間もなくの頃、1952年に行われた対局で、先手が塚田正夫先生、後手が大山康晴先生です。

この棋譜は1回目は『絶対王者木村義雄十四世名人からはじめて棋界最高の名人位を奪った男』に、2回目は『鶴翼対魚鱗の陣形!戦国時代の合戦の布陣が将棋の局面を通して蘇る。』に、3回目は『戦後間もなくの棋譜を楽しむ。矢倉は本当に終わったのか?』に、4回目は『『存分に攻めてきなさい!』そんな余裕を感じさせる受けの一手』に、5回目は『将棋の受けの極意とは『諦めない』気持ち。』に書いていて今回は6回目(最終)です。前回までの局面を再度掲載します。

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銀の圧力 『玉は包むように寄せよ!』

▲5六銀 △4九飛 ▲7三桂 △6二銀 ▲6一飛成 △6三玉 ▲6五銀

後手が逃げ切れるかどうか?うまく2筋方面から敵陣に逃げ込むことができれば後手の勝ち筋です。先手は、攻め駒が不足しているので自陣の銀を活用します。

先手の▲56銀は力強い一手に思いました。歩切れを解消しながら、敵陣に一歩進んだこの銀は、歩みは遅く見えますが、その醸し出す圧力は、相当なものです。後手玉が露出しているのでかなり迫力があります。

持ち駒がないと、相手の玉に迫る手がないように感じますが、自陣が堅いと、その自陣に近づけるように相手玉を追っていくことで、自陣の整備をしながら相手の玉を圧迫していくことができます。敵玉が薄い場合には、たった一歩突き出しただけでも厳しい手になります。

先手の▲73桂馬は単純な銀取りですが、厳しいです。『寄せは俗手』といわれますが、このシンプルな銀取りに対して、△62銀しか受け手がありません。

手順に王手されて△63玉まで逃げましたが、そこで▲65銀と出た手は、後手の玉を圧迫してまるで『逃がさないぞッ』って言ってるようです。まさに『玉は包むように寄せよ』ですね。左右挟撃と言うよりは前後の挟撃ですね。

 

攻め合い

△4五銀 ▲2一龍 △5五桂 ▲5七金寄 △6七歩
▲3二龍 △6八歩成 ▲同 銀 △6七桂成 ▲同 金 △8六歩

後手の△45銀は、先手から▲54金と打たれる手を防いだ手だと思います。▲54金を打たれてしまうと、後手は△73玉と桂馬を取りながら逃げるしかありませんが、そこで、▲74銀と王手で銀を捨てると、▲62龍が実現し、その時の先手の持ち駒が桂馬二枚と銀では受けが効きません。

ちなみに△45銀とされても、先手には▲74銀がありそうですが、たしかに後手が△74同玉と取ってくれる有難いですが、取らずに△53玉と逃げて、後手玉に44からの逃走路が開いています。

こうなると入玉の可能性も出てきて、後手玉に希望が出てきます。

先手は攻め駒不足を補うために、▲21龍から駒を取っていきます。後手も攻め合いに活路を見出すしかないと、△55桂馬から先手の金を剥がしにかかります。

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受けの好手 ▲57金

これに対する先手の▲57金が受けの好手だと私は思います。

なぜなら後手から△67桂成と金をダイレクトに取られた時に先手は同玉しかありません。この形は危険です。後手に桂馬を持たれた時に、再度△55桂打ちの傷があります。それを防いでの▲57金です。

しかし▲57金とした手には、追撃の△67歩が厳しく映ります。後手に歩を何枚も持たれているので、△67歩と何回も打たれると、どんどん歩で守り駒を剥がされてしまいます。

しかし、歩で取られる方が△67桂成とされて玉を釣りだされるよりもいいということなんですね。△68歩成とされたとしても▲同銀と取り返した形の方がしっかりしています。

この銀が、後手からの△79金打ちの王手を防いでいます。69から角や銀を打たれると危険ですが、角銀を渡さなければ王手がかかりません。裏を返すと、先手は後手に角銀を渡さなければ安全ということですね。

後手は、△67歩と打たずに△67桂成と成り捨て、先手の▲67同金の手に対し、△86歩と突いて、下駄を預けました。

 

鮮やかな詰み

▲4三龍 △7二玉 ▲8二金 △投了
まで99手で先手の勝ち

先手が▲43龍と入って即詰みです。

仮に、▲43龍の王手に対し後手が△53金と受けた時、▲75桂馬と打ちます。△同歩ならば、▲74金から▲84桂馬で詰みです。もし△73玉と逃げれば、▲83金の一手詰みです。

あっさり後手は、△72玉と逃げましたが、▲82金から詰みます。同玉の一手に対し、▲81桂成の王手です。△同玉ならば、▲83龍で詰みます。

▲81桂成に対し、△72玉と逃げれば、▲84桂から詰みます。

塚田先生の▲56銀からの寄せは、一見遅足に見えて、何と速いものか。塚田先生は詰め将棋作家としても有名ですが、この終盤の詰め足の速さは大山名人の粘りを許しませんでした。恐れ入りました。

 

追伸

塚田先生の将棋ははじめて並べてみたように思います。大山名人が若かりしころの棋譜でしたが、塚田先生の攻めを耐えしのぎながら、その受け将棋に磨きをかけたのではないかと思われて仕方ありませんでした。

塚田先生が終盤に見せた▲56銀がとても印象に残っています。自玉が堅いからこそ、わずかな銀の進軍が大きなプレッシャーとなっているのだと思います。

また、入玉の道をこの銀が進軍することで防ぎになりました。そうしておいてから龍が動いて攻め駒を蓄えに行きます。『要を優先し、後からでもできることは後にする。』当たり前のことですが、この手順が素晴らしいと感じました。

たいへん勉強になりました。

 

将棋はおもしろいですね。あなたの将棋ライフが実りあるものでありますように!(^◇^)!

他にも棋譜を並べています。よろしければご覧くださいませ。→棋譜一覧

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