人気漫画『キングダム』の王をおとりにする作戦は受け将棋の極意かも。



人気漫画『キングダム』

秦の始皇帝のことを題材に取りあげた人気漫画『キングダム』を御存知の方も多いと思います。私はこの漫画が大好きで、読んでいます。

この本の中で、あまりあらすじを話すと申し訳ないので、概略にとどめますが、ある族の王の戦法で、王自ら囮になり、敵の矛先を誘導して、敵の手薄になった本拠を討つという話が出てきます。

この戦法のくだりを読んだ時、受け将棋に通じるものがあるなって思いました。受け将棋の達人と言われる大山十五世名人の棋譜を勉強していると、まるで玉を囮にするかのように、敵の攻めを誘導し、敵を打ち破るという場面に出くわします。

ある意味、玉を取られたおしまいなので、たいへん勇気のいる戦い方だと思います。

さて、前回に引き続き、並べていきますが、今回は第3回目となります。第1回目は、『『日本一の攻め』の攻めを受け止める。受け将棋の魅力とは?』に書いています。第2回目は『角の活用に手数がかかるが、それで悪いか?』に書いています。では早速ですが前回までの局面を再度掲載します。

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端歩は心の余裕

▲3九飛 △6四角 ▲1六歩 △6三金

先手の▲39飛車はそのままだと、△49銀や△69銀などの攻め筋が生じていますので、この将来の攻めを予め防いだ手だと思います。この手は、▲19香車に紐を付けてもいます。そういう意味では次の後手の△64角を見越した手とも言えそうです。

この後手の△64角の位置がとても良い位置ですね。角の頭が弱点と言われますが、銀と歩で守られていて、余程のことがなければ、この角はこの位置を追われることはありません。

この角の睨みが、先手の攻めの自由を奪っています。先手は、▲16歩と端歩を突いて様子を見ます。この端歩の一手は、『居飛車の税金』とも言われる手です。この手は居飛車を指す上では仕方ないけど指さないわけには行かない手という意味で私は解釈しています。

あとは、面白い表現で『端歩は心の余裕』という言葉もあります。『何をそんなに悠長な!』って言われるような、そんな時こそ、悠然と指す端歩。何とも堂々としていてカッコいいです。

後手は△63金。この金上がりは玉から離れるように上がります。この守備力が分散しているようにひとめ見えますが、妙にバランスが良く見えるのは、△54銀の存在だと思います。

この銀は△43に引いて銀矢倉の堅陣に使うも良く、攻めに使うも良く、非常にバランス感覚を司る銀です。

 

開戦は歩の突き捨てから

▲5五歩 △同 角 ▲5六銀 △7三角 ▲4五歩 △同 歩 ▲同 桂 △4四銀

いよいよ先手は仕掛けます。しびれを切らしたのか、何か戦機をつかんだからなのか、それはわかりませんが、とにかく攻めの一手を繰り出しました。

どこから攻めるんだろうってずっと考えていました。

『開戦は歩の突き捨てから』と言われます。それを地で行く▲55歩です。この歩はただです。しかし、銀では取れません。△55銀では、▲56歩と打たれて銀が詰んでしまいます。なので、取るなら角です。

ちなみに△43銀と引いて銀矢倉を完成させるのは味が良く見えますが、これだと、先手に▲55歩と中央に位を取られてしまうことと、後手の64角の頭を守っている△65歩を取られてしまいそうです。

なので、ここは同角と取りましたが、先手は手順に▲56銀と後手の角を追いながら先手で前線に進むことができました。ここから、念願の4筋からの総攻撃を仕掛けます。

攻めの面白さは、1歩を献上することで、攻め駒を働かせる糸口を手に入れることができることだと思います。この糸口をつかんだ後、どう生かすかが攻め手の力量ですね。

後手は角を深く引きます。中央周辺に駒が充満してきそうなので、出来る限り、駒を離します。

▲45歩△同歩▲同桂△44銀までは一本道ですね。

 

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受けの真髄!攻撃陣を駆逐する玉

▲3三歩 △同 桂 ▲同桂成 △同 金 ▲4六桂

先手の桂馬は、このままだと、△45銀から取られてしまいます。▲33歩は攻めの桂馬を持ち駒にするために必要な一手ですね。しかし、▲33歩と打つ手で、34飛車と走る手が銀取りとなりつつ1歩をただで取れそうなのでやって見たくなります。

しかし、この手は、おそらく後手の△43金が最強の一手になる気がします。金を飛車取りに当てつつ、44銀を守り、飛車を引かせた後、3筋に歩を垂らして、やがて眠っていた△73角が敵陣に成りこんで馬となり、威力を発揮しそうです。

こうなると、後手玉は、入玉を目指しながら、先手陣の攻撃陣に殺到してきます。これが大山流の受けの真髄ではないのかなって思います。

さて、先手は▲33歩から桂交換を果たします。その後△33金となった形がしっかりしています。ここで先手がどう攻めを継続するかが難しいのではと思っていました。

そこで、指された手が▲46桂馬です。この桂馬は、△54の銀取りと後手の△73角の睨みを防いでいます。

さて、この桂馬、どう対処するかは難問だと思います。ここをしのげるかどうかが勝負の行方を左右するのではって思います。いわゆる『やまば』ですね。

追伸

将棋の一手一手を並べて行くと、いろんな想像が浮かんでは消えていきます。キングダムの話のくだりもその一つです。

そのことは、昔実戦の中で表れた戦略戦術が、将棋の中に投影されているのではないのか、そう思うと、江戸時代の御城将棋など、武家社会で取りあげられていたことが理解できます。

私は歴史書が好きで読んでいますが、そういう意味で、面白さが倍増していて幸せを感じます。

どうぞあなたの将棋ライフが楽しいものでありますように!(^◇^)!

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