受けつぶしは、相手の玉を攻めるのではなく、相手の心を攻めることなのだ



具体的に受けつぶすとは?

大山康晴十五世名人の受けを学んでいます。受けつぶすということは具体的には一体どういうことなのか?そのお手本を大山将棋を並べていると、『あ、こういうことなのか・・・』レベルに応じて感じるものがあると思います。

今回、日本一の攻めと呼ばれた高島一岐代先生との将棋が完結します。棟梁図は、まさしく受けつぶしという表現がぴったりだと思いました。

さて、前回に引き続き、並べていきますが、今回は第6回目完結編となります。第1回目は、『『日本一の攻め』の攻めを受け止める。受け将棋の魅力とは?』に、第2回目は『角の活用に手数がかかるが、それで悪いか?』に、第3回目は『人気漫画『キングダム』の王をおとりにする作戦は受け将棋の極意かも。』に、第4回目は『アマゾンプライムで映画『墨攻』を見ながら将棋の受けを考えてみた。』に、第5回目は『攻め将棋は『攻めつぶし』、受け将棋は『受けつぶし』。』に書いています。

では早速ですが前回までの局面を再度掲載します。

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後手、巧妙な受け

▲3三歩 △同 金 ▲同銀成 △同 桂 ▲4四歩 △3二銀 ▲3四金 △2五銀

このままでは、後手から△34歩や△43歩と攻めを催促されて、先手の攻め駒を盤上から消されてしまいます。馬の働きが強力です。なので、先手は▲33歩から猛攻します。△33同桂馬とされた後、先手は、桂頭に▲34歩と打たず、▲44歩と垂らしました。

この手が攻めの参考になる手だと思いました。▲34歩と打つと、▲33歩成△同玉となり桂馬をとることはできますが、後手の陣内に、先手の攻め駒がなくなってしまい、後手の玉が上部に上がってきます。

『中断玉寄せにくし』の格言がある通り、玉を上部に上がらせては寄せが難しくなりますし、第一、後手の二枚の馬が、後手玉の上部を手厚くして、先手の陣内を占領している状況です。このような時に玉を上部に進出されては、入玉を許してしまいそうです。

▲44歩は、▲35の銀がただで取られてしまいますが、代わりに▲43歩成とすることで後手玉の近くにと金を作り、後手玉の位置も下段のままだという点で優れている手だと思いました。

後手は丁寧に△32銀と受けました。と金を作らせない意図ですが、一枚入っただけで、かなり玉の安全度が上がった気がします。先手は、なおも圧力をかけて▲34金です。この手をどうやって受けるのか?

△42歩と打てればいいのでしょうが、二歩の販促で負けてしまいますし、仮に打てたとしても、▲24歩と2筋からの攻めも生じています。受けはそう単純ではありません。

そこで差された手が△25銀です。金銀が密集していてよくわかりませんが、何となく強力な受けの手の雰囲気を醸し出しています。

と金を残す攻め

▲4三歩成 △3四銀 ▲同 銀 △同 馬 ▲4四歩

先手は、▲43歩成と攻め込んでいきます。これを放っておいて、△34銀と金を除去します。この後、先手は▲34同銀と取り返しますが、そうせずに▲32と金と銀を取りたくなりますが、そうなると、銀は取れますが、とっかかりがなくなってしまいます。

後手の△34銀が手厚く玉頭を守っています。後手の△34同馬に対して、▲44歩と”と金”につなぎます。このと金は先手にとって、攻めの種火です。消してはなりません。

 

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先手の攻め駒を一掃

△4三銀 ▲3五銀 △4四馬 ▲同 銀 △同 銀

後手は、△43銀と”と金”を払います。これを単に▲43同歩成では種火が消えてしまいますから、▲35銀は最後の勝負手です。△35同馬なら▲43歩成で”と金”が残ります。後手は、ここで▲35銀を取らずに△44馬としました。馬一枚と銀一枚の交換ですが、後手は先手の攻めの火種をすべて盤上から消去することに成功しました。

平凡は妙手に勝る

▲3四歩 △4五桂 ▲1七角 △同 馬 ▲同 飛 △4三銀 ▲投了

まで122手で後手の勝ち

先手は、▲34歩と桂頭を攻めていきますが、△45桂馬とひらりとかわします。その手が57の飛車取りです。ここで後手を引くのはつらいですので、先手は、▲17角と後手の馬を消しつつ飛車を逃げました。

この瞬間、手番は後手に移りましたが、後手の手は、厳しい攻めの手ではなかったです。平凡ですが、玉を固める△43銀です。この一手、指せるようで指せない一手だと思いました。一見平凡に見える一手ですが、まさに『平凡は妙手に勝る』ですね。

この一手、『勝って兜の緒を締めよ』を体現したような一手だと思いました。もう一勝負これからやりましょうか?そう後手に言われているようです。『もう勘弁してください』そんな答えが返ってくるようです。

追伸

投了図からは、先手に攻め手がない状況で、後手からは、ゆっくり自陣を整備する手と、△36歩から”と金”を作っていく手が見えます。この状況では、先手としても打つ手なしということで投了となったことと思います。

冒頭、受けつぶしという表現がぴったりだと書いたのは、最後の最後、後手が指した手は、自陣に駒を埋める手です。先手の玉は詰まされたわけではなく、指そうと思えば指すことはできます。

どうして投了したのか、と問われれば、心が折れたから、と言うのが実情ではないでしょうか。受けつぶしとは、相手の心を折って、相手自ら負けを認めさせるということなのだと思います。

攻めつぶしの場合、相手は自玉が文句なしに詰まされてしまった以上、投了したくないのに、投了せざるを得ません。そこには投了する者の意思は関係ありません。

しかし、受けつぶしはそうではないです。もうこれ以上指したくない、もうたくさんだ、このような思いは、すべて投了する側の意思です。

受けつぶしは、相手の玉を攻めるのではなく、相手の心を攻めることなのだと、この棋譜から学びました。

孫子曰く、『百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。』

戦わずして、敵を屈服させるということ。まさしくこの言葉がぴったりです。

最後までお読みくださいありがとうございました。

あなたの毎日が楽しく実りあるものでありますように!(*^_^*)!

他にも書いています。ご興味がおありの方は『将棋の目次』をどうぞ。

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