孫子の教え。敵に勢いを利用した攻めをさせない受けの技術はすばらしい



孫子の教え。勢いを利用して攻める!

大山康晴十五世名人の将棋を並べていて、つくづく感じるのは、攻めと受けの呼吸が素晴らしいと思います。攻め始めたら止まらないって苛烈な攻めを売にする棋士もいながら、大山先生の将棋は、攻めが決して弱いわけではなく、攻め続けたかと思うと、独特のタイミングで相手に手番を渡します。

中国の古の兵法書、『孫子』がありますが、その中で、孫子が攻めるときに大事にしているものの一つに『勢い』というのがあります。

水をため続けておいて、一気に堰を切って奔流のように流し去る『勢い』を攻めの重要な要素だと言います。

大山先生は自分が攻めるときには勢いを作って攻めていますが、相手に手を渡すときと言うのは『相手は勢いを持てないだろう』ってタイミングなんだと思います。

勢いを作れない状態で相手に手を渡す、という感じでしょうか。

今回9回目の記事になります。最終です。過去の記事は下記に書いています。
1回目『守りきって勝つ。受けの技術を磨くために。位を取って持久戦、の研究。
2回目『攻めに強い石田流を相手にどう戦う?位をとって戦う戦略
3回目『振り飛車に対して位取りを使って勝つためのコツとは?
4回目『勝負のコツは、相手の意表を突く手を指すこと。動揺すると間違える。
5回目『将棋の受けを鍛える。何もしないことが受けにつながる?
6回目『受けの勝負手、自陣龍!専守防衛策は果たして成功するか?
7回目『偏るとダメ。攻めと受けのバランスをとる勝負の駆け引きが面白い。 』
8回目『王手は先手になる道理。受けから攻めに転じるには王手をしよう!

前回局面を再度掲載します。

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角筋も塞ぐ

▲4六歩 △4四歩 ▲3三桂成 △同金寄

先手が▲46歩と手を戻したのは、桂馬を守るためというのもありますが、放っておくと、△47歩成とされたときに、▲47同銀と取り返すと、▲69金が浮き駒になりますから、その金を△67角で取られてしまいます。

そこで一転して△44歩と桂馬取りをかけます。この桂馬取りをかけつつ、▲55角の睨みを消します。

▲33桂成△同金寄としたことで後手陣の堅陣ぶりを見てみると、先手はどこから攻めればいいのだろうかって悩んでしまいます。

興味深いのは、この局面、駒の損得で言えば、先手の香損でしかありません。しかも先手は香車は取り返すことも可能です。龍が敵陣で活躍している局面を見ると、一見先手の方が良いようにも見えるから不思議です。

しかし、後手の陣形の手厚さと、玉頭戦にどちらが強いかと問われれば、後手の圧倒的な気勢をみとめないわけにはいきません。

 

王手角取りを見せる!

▲5八桂 △2五桂 ▲3六銀 △同 銀 ▲2六桂 △3七銀

▲58桂と打つことで、直接▲69金を狙われることを防ぎました。ここに桂馬を手放すのはつらいですね。

対照的に、後手は△25桂馬と打ちました。この攻めの急所に配置した桂馬の威力たるや、すさまじいものがあります。

先手はたまらず▲36銀と36の桂馬を取りました。この一手によって、先手の28の地点に効く駒はなくなりました。後手の△36銀と取り返した手によって、先手の27の地点に圧力が高まりました。

ちなみに△27香成から殺到されたとして、先手玉が詰むかどうかはわかりませんが(たぶん詰まない)、△25飛車と王手角取りに打たれる手があるので、先手は、▲26桂馬と防いだのだと思います。

しかしこの後、後手は畳みかけるように、△37銀打ちと打ちました。数の攻めです。

 

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角を切るタイミング

▲2八銀 △5八角成 ▲3七桂 △同銀成  ▲投了
まで150手で後手の勝ち

先手は▲28銀と打ちました。▲37同桂馬と取ると、△同銀成▲同銀△同桂成となってしまいます。受け駒の数が足りていません。

ここで▲28銀と打ちましたが、この一手は受けの手筋です。△同銀成とさせることで、玉も守りにつかせることができます。かと言って、後手は△38銀成とすると、▲同金と守りの金が働いてきます。

そこで、この絶妙なタイミングで後手は△58角成と角を切り、桂馬を取ります。これを▲同金と取ると、先手の38銀が浮き駒になります。なので、先手は同金と駒を取り返すことができません。

そこで、▲37桂馬と銀を取り返しましたが△同銀成とされ、それを取り返すと、いずれ▲69金が浮き駒となり、取られてしまいます。

そこで投了もやむなし、となりました。

攻めの石田流に対抗して四筋位取り。玉頭に据えた香車の迫力!』のページに戻る

 

追伸

将棋の攻めと受けを全8回に分けて見てきました。本当に勉強になることばかりでした。

詰むや詰まざるやの切り合いの将棋も面白いですが、このように、攻めと受けのバランスを取りながら、最終的には圧倒的な堅陣を残したまま勝つというのは気持ちがいいです。

安全に勝ちたいというのは、誰もが思うことだと思います。

攻め一辺倒、受け一辺倒ではなしえない境地なのかもしれません。

これまでお付き合いくださいましてありがとうございました。

また、気に入った棋譜を見つけて、勉強したいと思います。その内容をまた記事にしたいと思います。

ではまた。(*^_^*)

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