藤井聡太四段28連勝!印象的な八方睨みの自陣角。澤田真吾六段敗れる。



2017年6月21日、大阪、関西将棋会館で王将戦1次予選が行われ、弱冠14歳の藤井四段が偉業を達成した。30年前に神谷広志八段(56歳)が達成した28連勝記録に並んだのだ。しかもデビューから28連勝なので、勝率はなんと10割である。

対局相手は実力者で知られる澤田真吾六段(25歳)である。前回20連勝目のかかった対局で、藤井四段は澤田真吾六段に絶対絶命のピンチにまで追い込まれた。ある意味、澤田六段は、最も藤井四段の連勝記録を止める期待が大きい棋士である。

今回の対局は、前回の対局と同様、藤井四段の先手である。しかも、先手角換わりで、戦型まで同じである。藤井四段の角換わりという戦型に対する自信と、前回追い込まれたのに、もう一度同じ戦型でいこうという心の強さを感じる。

先手角換わりという将棋は、先手が有利と言われる。この戦型を前回も今回も受けて立つという、相手の得意型を受け止める姿勢を見て、澤田六段もまたかっこいい棋士であると思う。

 

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今回の対局の概要は、37手目に藤井四段は45歩と位を取った。その手を境に、澤田六段の攻めが始まった。

藤井四段は、41手目に空いた46の空間に、角を打った。自陣角である。余談であるが、この自陣角を見ると実力制第四代名人の升田幸三と伝説の棋士と言われた阪田三吉のエピソードを思い出す。このエピソードについては別の記事で紹介しようと思う。この自陣角は、敵の攻め駒と敵の玉頭を睨み、八方睨みの角である。この角がどれだけ働くかが眼目と言える。

それでも構わず澤田六段は攻めを継続する。端をつき捨て、桂馬が跳ねる。攻めは飛車角銀桂と言われるが、その全てが働きだす構図である。局面は澤田六段の攻めに対し、藤井四段の受けである。

47手目から、角の睨みを生かして藤井四段は反撃に出る。跳ねた桂馬を取ろうというのである。53手目桂馬を取り切り、藤井四段の桂得である。しかしそれでも澤田六段の攻めは止まらない。

54手目から藤井四段の飛車を狙いながら、58手目65馬と馬を作る。桂馬1枚を損したが、馬を好位置に作って局面を制圧し、藤井四段の生角と対照的な構図である。

しかし、藤井四段も巧妙にその馬を生角と交換して、盤上から消しにかかる。馬が消えたが、そのあと、澤田六段の攻めが再び継続する。澤田六段の68手目19角成りで香車を取り返し、駒の損得はなくなり、局面は混沌とた中で、次の69手目藤井四段の指し手は何かと見ていると、64角と角を打った。

この角は、一見ぼんやりとしているように見えたが、だんだんと素晴らしい角であることが分かってくる。まず、浮き駒となった銀に紐をつけている。次に、間接的ではあるが、敵玉を睨んでいる。次に敵の飛車走りを防いでいる。この角もまた、八方睨みの角である。

実際にこの角が放たれてから、藤井四段の反撃が始まっていき、わずか21手後の100手目で澤田六段の投了となった。この角を打って以降、藤井四段の玉は、王手をされていない。藤井四段の攻めの手番のまま押し切った格好だ。

84手目、澤田六段は、急所の藤井四段の馬をどかそうと74に香車を打った。藤井四段はその馬をどこに逃がすのかと思って見ていたら、馬取りを放置して敵玉頭に近い4筋を攻める。馬を取られる前にはたして寄せきれるのかという展開になっていった。澤田六段は94手目75香車と念願の馬取りを果たすが時すでに遅く、澤田六段の96手目77銀打を最後に、藤井四段により即詰みに討ち取られた。

藤井四段の将棋を見ていると、優勢の局面を築いたら手番をなかなか相手に渡さない。まるで、水の流れに例えると、一旦どちらかにわずかでも傾斜ができると、水は流れをどんどん加速させて行って勢いづき、もうその流れは止まらない。そんな印象である。まさに69手目の64角はそういう傾斜をわずかにつけた手であったのだろうか。この角を打たれて以降澤田六段に面白みのある局面は出現しなかったように思われる。

この28連勝という偉業ですら、わずかな傾斜に過ぎないのだろうか。とすれば、一体この14歳の棋士はどこまで強くなるのだろう。どこまでも勝ち続けてほしい。そんな思いが湧きおこっている。

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