将棋NHK杯トーナメント決勝で見せた天才村山聖の天才的強さと清々しい表情



忘れられない将棋

1998年2月28日に行われた将棋NHK杯トーナメントの決勝において、今でも私の記憶に残って消えない対局があります。

永世7冠を達成した羽生善治さんと、村山聖さんとの対局です。

 

テレビで行われた大局を私はテレビの前で見ていました。この対局を見ていたときは、この後、およそ5か月後に村山さんが亡くなるとは思いませんでした。

つらい体を精一杯鼓舞して、最強の相手に対して、全力を尽くした将棋なのだと、8月に村山さんが亡くなった時に強く心に焼きついたから、今でも覚えているのだと思います。

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羽生の穴熊に対し玉の薄さも恐れず果敢に攻める村山

先手羽生さんの居飛車に対し、後手村山さんは向かい飛車。

羽生さんは穴熊に囲い、玉を堅く固めます。

ここまでの手順を参考までに掲載します。

▲7六歩     △3四歩  ▲2六歩   △4四歩

▲2五歩     △3三角  ▲4八銀   △9四歩

▲5八金右 △9五歩  ▲6八玉   △4二銀

▲7八玉     △4三銀  ▲5六歩   △2二飛

▲7七角     △6二玉  ▲8八玉   △7二玉

▲9八香     △8二玉  ▲9九玉   △7二銀

▲8八銀

このような形は、穴熊全盛の現在では、穴熊有利として、振り飛車側を持ちたい人は少ないのではないかと思います。

6筋の攻防が天下分け目の関ヶ原

ここから、△3二金と上がり、急戦を見せて、ゆさぶりをかけます。後手の2筋からの反撃を防ぐため▲6八角と先手はしましたが、むしろ後手に誘導されて角筋を逸らされたという風に感じました。

△5四銀 ▲6六歩 △4五歩▲6七金 △6四歩

はたして、6筋を手順に争点にしようという後手の狙い通りの展開となりました。

▲7九金 △6五歩 ▲5七角 △4三金▲5九銀 △6二飛

こうなると、6筋の攻防が全体の形成を左右するという、まるで関ヶ原の戦いのような様相を呈してきました。

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村山捨て身の猛攻

後手村山さんは、直接敵玉目掛けて集中砲火をかけます。

先手も、▲6八飛 と6筋に勢力を集中し、決戦に備えます。

△6六歩 ▲同 金と手を進めておいて、一見悠長にも見えたのが次の一手。

△7四歩です。

すごく、玉のこびんが開いて気持悪く思うのは私だけでしょうか?

これからの譜を見るとわかるのですが、桂馬まで活用して攻めようというのです。

後手とすれば、ここで攻めが止まってしまっては、終わってしまう。なので、攻めることができる駒は全て投入していく、ということなのだと思いました。まさしく捨て身です。

▲5八銀 △7三桂

羽生、角捨ての反撃。

先手羽生さんも、桂馬の弱点である、桂頭を狙っていきます。

▲7五歩

もう後手としては攻めしかありません。どんどん行きます。

△6五銀 ▲5五歩 △6六銀 ▲同 飛 △同 飛 ▲同 角

と派手な交換が行われた後の後手の指し手は、 △7六金。

重厚な金打ちです。角

とりに打って先手をとり、7筋さえも制圧しようという気迫のこもった手だと思いました。

しかし、先手も負けていませんでした。角とりを放置して指した手が、

▲6二歩 △5一金を利かした後の▲7四歩!

普通角は逃げると思うのですが、玉に向かって攻めゴマが動いている、いわば勢いを重視した手というのでしょうか、とにかく角をただで捨てたように私には見えました。

とてつもなく太っ腹な手であり、それだけ覚悟を感じた一手だと感じました。

後手は△6六金と角を取りました。

しかしここから先手の猛攻が始まります。

▲7三歩成 △同 銀 ▲8五桂 △6二銀▲6三歩 △同 銀 ▲3一飛

この猛攻をしのぎ切れば後手の勝ちです。攻めきればもちろん先手の勝ちです。

薄氷を踏む玉捌き

後手の立場に立つとめちゃくちゃ怖い曲面が続きます。▲3一飛車と打たれた局面は、ものすごく怖いところです。

しかし後手は冷静に

△7五飛 ▲7三銀 △7一玉

とします。

先手は後手に▲3二飛成として下駄を預けました。

この瞬間先手は4三の”金取り”としています。

この金を守るのではなく、7二歩と打って、7三の銀を取りにいくことで、73の銀と43の金を交換する展開になれば、先手は、一時的に竜が使いづらく、後手は自玉が安全になります。

こうなると、先手の攻めが切れて、後手の勝ちが見えていました。実際に羽生さんも投了を考えていたということでした。

勝利の切符の行方

△7六角

この手を指したとたん、勝利の切符が村山さんの手からするりと落ちてしまったようです。

すかさず▲8二銀不成△6一玉 ▲7三桂不成。

これによって、後手は虎の子の飛車を取られてしまい、先手の攻めが途切れることはなくなり、後手が先手の穴熊を攻略するのぞみが大きく減ってしまいました。

これを見て、後手の村山さんは投了します。

敗れた後の潔い姿

この対局の後、授与式があって、村山さんの表情を見ていると、とても清々しく、さっぱりとしていた表情が印象的でした。

精一杯やり尽した、といった感じに受け取りました。

もあとで村山さんが亡くなったことを知った時、この時の表情はもっと深いものだったのでは、と思いました。

自分は村山さんから、ベストを尽くすことの大切さを学びました。たとえ敗れたとしても、自分の魂を精一杯輝かせることができた、そう思えることが大切であると。

敗れた時や挫折を味わった時に人の真価は問われると言われます。

全戦全勝はありません。人生においてもそうだと思います。ならばこそ、このような姿勢で生きることが大切なのではないか、そういう勇気を頂きました。

この棋譜は私にとっては宝物です。

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