力将棋!後手矢倉でどう受ける?



荒法師、灘蓮照の矢倉

『将棋の受けを学ぶ』をコンセプトに、大山康晴十五世名人が後手矢倉を持った将棋を並べています。

先手の棋士は、なるべく攻めの評価が高い棋士を選んでいますが、今回の対局相手は灘蓮照先生です。

灘先生は、矢倉が十八番で、『灘流矢倉』として有名です。

灘先生の将棋は、力将棋の感が強いです。厚みを築いて攻めが重厚な感じですが、一番の特徴は玉さばきだと思います。普通の棋譜では見ることのないような玉の形が出現したりしますので、見ていておもしろいです。

一番下に棋譜を5記事に分けて書いていますが、その総括的な意味で書いていますので、棋譜の記事をご覧いただいたうえでお読みいただくと伝わりやすいかなと思います。

 
Sponsored Links

後手、矢倉棒銀!

後手の大山先生は、棒銀で攻めていきます。本当は後手がどっしりと攻めを待つ感じの展開を期待していたのですが、先手の攻めの体制が整う前に、急戦で挑んでいくのも一つの戦略です。『攻めるは守なり』の通り、攻めることで守ることにもつながる場合があります。

先手の灘先生がどう急戦の攻めを反撃に変えるかという点も参考になります。普通棒銀に対しては、▲46角と飛車取りにのぞく手を用意しておくところですが、▲46歩と突いているため、その受けが効きません。しかし、それでも棒銀を防がないといけないとしたら、”75”の地点が争点となります。

それには▲65歩から▲66銀と出て防ぐのが自然です。

ここから後手が攻めを継続していくとどうなるのか、その辺が見ものです。『下手に攻めると悪くなるよ』って言うのが守る側の主張ですから。

待つことの大切さ

後手は、棒銀に出た手前、何とかして攻めを継続したいところです。△86歩から仕掛けますが、この時先手は▲同角と角交換に誘導しました。先手としては後手の玉がまだ囲いに入っていないし、飛車が不安定なので、敵陣に角を打ち込んでかく乱したいところです。

後手は、先ほどまで攻めていたのとは一転、受けに回る展開です。少なくても先手の反撃は成功したのではないかって思える局面で、後手は飛車をいじめられながら、馬を作られてしまいました。しかも自分は生の角を自陣に手放してしまって、この角が働くかどうかすらわかりません。

普通、この局面で後手がよいとは思えないと思います。

そんなとき、後手はじっと、金を寄ったのです。この手が待てないところを待った手と言えると思います。

 
Sponsored Links

攻める前に受ける

攻めると見せかけて、受ける。簡単そうでなかなかできない手で勉強になります。強力な攻めをしようとしたら、反撃に耐えられるだけの城の堅さが必要です。そのために、金を寄ったのです。金を寄ったことで城への逃走路が開けました。

玉を入城させるタイミングが絶妙です。飛車を敵に渡したあとに、ちょうど城に入るという呼吸です。

相手は飛車を王手に打ち込んでくることが予想されるので、あらかじめ玉を囲う、と。

この独特のリズム感が最高です。

眠っていた角を活かす

先手は最強の攻め駒である飛車を手にしましたが、守る金駒がありません。後手は攻めの総大将である飛車を失いましたが、金銀を手持ちにしています。しかし、まだ攻めるためには力が不足している感じです。

そこで、眠っていた角を働かしにかかるんです。『こんな角働くのか?』そんな角を働かせる手順に驚かされます。

と金を敵玉の方に向かって使うのではなく、そっぽの端っこの方に使っていきます。一見、攻め駒が遠ざかったいる感じがしますが、さにあらず、9筋の香車がいなくなれば、9筋から角が働くではありませんか!

本当に玉を早く攻めようと思ったら、一見遠回りに見える手が意外に早いってことを教えてくれます。これこそまさに『急がばまわれ』です。

攻めの速度差に現れる受けの技術

眠っていた角が働いた結果、先手玉は抗戦むなしく詰まされてしまいました。受けの将棋を考えたとき、最後は大山名人の一見攻めの手がゆっくりと指されている間、先手の攻めが後手に届かなかったのは、一重に後手玉が堅いからだと言えます。

後手玉の投了図での姿を見ていただくと分かりますが、堅陣片矢倉におさまり、底歩ならぬ底香が打たれていてめちゃくちゃ堅いです。

これだけ堅いと、先手が反撃しようにも時間がかかります。先手の攻めが間に合うまでの間に、後手は角の活用が間に合ったという感じです。

受けには、相手と自分の攻めの速度差としても現れることが勉強になりました。
戦型:相矢倉 先手:灘蓮照
後手:大山康晴
1. 将棋の受けは難しい。頭は将棋、体はゴルフ。奥が深くて学びが多い!
2. 将棋から学ぶこと。『待つこと』の重要性。懐の大きさを感じる一手。
3. 受けの極意とは。攻めてから一転して逃げる。前もって逃げ道をつくる
4. 受け将棋の実戦の技術。細かな手の積み重ねが玉の堅さとして終盤の差
5. 中段玉は寄せにくい!空中要塞の攻略方法。将棋、攻めと受けの呼吸!

Sponsored Links