先手矢倉対後手雁木。増田四段が現代に蘇らせた雁木の優秀性を感じた一局。中編



前回までの局面を再度掲載します。この局面からどのように進展するか、かなり興味深いところです。

この局面は後手が桂馬を守って飛車を85に浮いたところです。この手は、ただ桂馬を守っただけ、というようにも見えてきますが、放っておくと、後手は5筋を争点に、桂馬を主軸として攻めてくると思われます。遠く飛車が角を質駒にしているところも見逃せません。

▲7五歩 △7三角

先手は飛車の横効きを遮断して、桂馬を取りにいこうとします。玉頭に手をつけるようで、先手としては指しにくいように思えたのですが、攻め駒を責めるのは、矢倉の真骨頂とも言えます。

しかし、次の後手の手に驚愕しました。なんと△7三角です。

この手は一体、何だろう?・・・

私の頭には、?マークがかなり続いていました。飛車を浮いて、桂馬をわざわざ守ったのに、桂馬を守らず角をひく?

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しかし、じっと見ていると、ふと、桂馬にばかり気を取られていましたが、▲6五銀と桂馬を取ると、△8六歩があるではないですか!

△8六歩▲同歩△同飛

こうなると、見事に十字飛車がさく裂します。遠く36の銀取りとなっているのです。

桂馬を守っただけの手にうつった手が、実は75歩を誘う手であったとは・・・

悠々と角を引いて、角への当たりを避けて、相手に手を渡しました。

こういう手にしびれます。地味だけれど、かっこいい。底光りのする手だと思いました。角が光っています。

▲2四歩 △同 歩 ▲同 角 △2七歩▲同 飛 △2三歩 ▲4六角

先手は、ここから角で飛車先の歩を交換します。後手はそつなく、△2七歩として、守りに効いている二段目の飛車を三段目にずらします。先手は手順に46角と引いて36銀の浮き駒を角で隠して、先ほどの十字飛車の筋をさりげなく消します。次は、▲6五銀と桂馬を取りにこられます。

△8八歩 ▲同 金 △6四銀▲5四歩 △同 銀

△8八歩は守りの金を無力化する手筋。このタイミングでは同金ととるよりないと思います。そうしてから、銀を出て桂馬を守ります。先手▲5四歩と取りこみます。これを同銀としないと、やはり▲6五銀と桂馬を取られて、同銀と取り返すと、73の角が浮いているので、素抜かれてしまいます。

▲3三歩 △同 金 ▲5三歩 △同 金

ここから先手は利かしに効かせて形を乱してきます。

この▲5三歩は取らないわけにはいきません。この歩を残しておくのは、自陣に地雷を埋めたまま戦うのと同じです。

前は、こういう歩を取らずにかわす手もありだと思っていましたが、金や銀を持ち駒にする展開では、歩の効きに金や銀を打ちこまれて、守り駒を盤上から消されてしまいます。

とらない方がいい局面もあるのですが、玉周辺に打たれた歩をそのままにしておくと、守りゴマははがされやすいです。

▲3三歩△同金 は後述する角金交換をするための準備です。

▲2四歩 △同 歩 ▲同 角

一瞬、角で金との交換を強引に迫るところを見て、なぜわざわざ駒損をしにいくのか?と理解に苦しむ方もいらっしゃるかと思います。

しかし、この局面は角よりも金の方が、価値が高くなっています。まず、後手の33の金は守りの要です。この駒が盤上から消えると、飛車成りが受からなくなります。この局面で飛車が成りこまれると、後手はかなりの確率でやばいです。

△2六歩 ▲同 飛 △2五歩▲同 飛 △3二玉 ▲2三歩

それが分かっているだけに、後手もここが正念場です。簡単に金を交換させません。その方策が、飛車を25までつりあげます。これによって、▲3三角成△同桂の時、手順に飛車とりになります。

しかし、それでも飛車を強引に成りこみたくなるかもしれません。一例をあげると、

▲3三角成 △同桂 ▲2三金 △4三玉 ▲3三金 △同玉 ▲2一飛車成

となります。しかし竜を作った代償に持ち駒は桂馬と歩しかありません。こうなると、攻め切るのにかなり難しさが残ります。入玉の楽しみも後手に生じます。

そこで、▲23歩。

これは、このままにしておくと、▲3三角成 △同桂の後、▲2二歩成が王手で入ります。玉が逃げたあと、▲23飛車成りとすることで、と金をつくり、持ち駒の金は温存したままで竜がつくれます。こうなれば先手優勢です。

△4三玉 ▲2二歩成 △3四金

なので、先手は歩成りが王手にならないように、△4三玉と早逃げします。先手は無条件で▲22歩成りでと金をつくり、それを待って、△3四金と飛車角両取りをかけます。

▲3二と

こうして、次の▲4二角成りを見せます。馬を作らせると、かなり怖い展開が後手に待っています。実際に本譜はそうなりました。そうなんです、後手は、△2五金と飛車をとり、角成りを甘受します。

△2五金 ▲4二角成△3四玉

こうなると、手順に玉は自陣から追い出されます。

▲2五銀 △同 玉

こうして、銀まで捌かれしまいました。文字通り裸の王様です。

 

この局面を見て、後手を持つのはかなり勇気がいると思います。ここから先の手順を読み切って、踏み込んだとしたら、増田四段はやはり天才だと思います。何か一つでも読みぬけがあれば即負けです。なんせ、質駒がけっこう落ちてます。

この後はどうなるのか、続きは次回とさせていただきます。チャオ!

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