藤井聡太四段29連勝!端の名角が鬼神の働き。東の天才増田康宏四段、連勝を止められず。



弱冠14歳の藤井聡太四段が公式戦新記録となる29連勝を達成した。対局は、2017年6月26日に東京都渋谷区の将棋会館で行われた竜王戦決勝トーナメントである。相手は、藤井四段が西の天才ならば、東の天才は増田である、そう言われた増田康宏四段19歳である。両者とも10代の棋士であり、これから先、お互い切磋琢磨しあう運命になる好敵手である。その大舞台で、藤井四段は前人未到の29連勝をかけて、対する増田四段はそれを阻止するために死闘を繰り広げた。

 

対局は、先手藤井四段の角換わりに対し、後手増田四段の雁木のような出だしから力戦模様となった。

局面が急激に動いたと思われたのは、42手目後手増田四段による決断の角切りである。この手の狙いは角と刺し違えた金により先手藤井四段の飛車を詰ますことにあった。藤井飛車をいつでも取れる局面を築き増田優勢かと思われた。

しかし、藤井四段の47手目22歩の桂とり。この歩に対して後手増田四段が同金と取ったところから、藤井四段の猛攻が始まった。

まず左桂馬の二段跳び。一気に最下段の桂馬が敵の増田陣に踊りかかる。これに対し増田四段は中央を銀で手厚く守るが、藤井四段の53手目75角打ちが、先の22歩同金と守りの金を離れさせた効果により先手になった。後手を引きながらも、金を32に戻して角成りを受けるが、再度の22歩があった。これには増田四段は桂馬を逃げるよりなく、遊んでいた24の銀がここで働いた。銀桂交換の駒損になるが、藤井四段は銀を桂馬と刺し違えた。継続して、手持ちの二枚目の角を急所の15に据えた。この角は、局後にも痛感するが、まさに攻防の名角である。攻めては玉を睨み、受けては飛車を取ろうとしている金を急かす。これにより、増田四段は飛車をすぐにも取らざるを得ず、その後は、増田四段がしばらく受ける展開となる。

63手目藤井四段は、万力で締め付けるような桂馬を53に打った。これにより、増田玉が左右に狭くなった。玉を上部に脱出させるため、頭上を守る金をどけて15の角の守りの備える。

しかし65手目には、一転してスローダウンしたように21歩成りとと金をつくる。増田四段に適当な攻め手がないことを見越しているような手であった。実際に増田四段は、藤井四段の攻めの根元である桂馬を外すことが先決とばかりに、その桂馬を取りに64歩を突いた。しかし藤井四段は悠然とと金を活用し、銀とりをかける。さすがにと金を残したままタダで銀は渡せないので、31歩と受けるが、藤井四段はあっさり銀をとってと金を消した。と金は消せても、銀を取られたのは痛い。駒割は藤井四段の桂得となった。さらに藤井四段は、桂取りになっていた歩を角で払って一呼吸置いて攻めの手を休めた。

その隙に、増田四段は72手目68歩と王手をかける。焦点の歩を打たれた先手は金でその歩を払った。これは、金が敵飛車の守りから離れたため、増田飛車がダイレクトに成れる状況を作った。逆に言えば、藤井四段は飛車が成ってきても勝てると、この時すでに見極めていたともいえる。実際に増田四段は飛車を成らず、74手目52玉と玉の早逃げを着手。

藤井四段はこの後どうやって寄せるのかと検討もつかずに注視していると、75手目34歩と打った。増田玉の方ばかりを筆者は見ていたので、金頭に打たれた歩を見て意外な感じがした。これに対し、増田四段が同金とした局面をあらためて見てみると、なんと、15に据えた角のラインが蘇ってきたではないか。

一応の役目を終えて、目立たなかった端っこの角が、一段の輝きを放つ駒となったのだ。端にいるため八方睨みとは表現しづらいが、敵陣を睨む眼光は、すさまじい迫力である。

藤井四段の将棋は、この角に印象的な手が多いように筆者は感じる。なんとも角が生き生きとして映るのだ。

77手目41桂成。これも成られてみてわかるのだが、ただでとれる桂馬がとれないことに気付く。取られる魚にしてみれば、いつの間にか、網をかけられたような感じである。増田四段は危険を察知したかのように78手目63玉と角とりも兼ねて早逃げをする。藤井四段は31に角を成る。

80手目、87飛車成と増田四段は待望の飛車成りを果たし勝負をかける。それでも藤井四段は、落ち着いて81手目61銀と敵玉の退路を丁寧にふさぐ。自玉に詰みがないことを読み切っているのだろうか。

82手目増田四段は89竜と王手をかける。ここで藤井四段が持ち駒を使って受ければ、増田四段の玉に詰みがなくなり逆転模様。したがって、藤井四段は持ち駒を使わずに逃げる。増田四段はもう一枚の飛車を逆サイドから28飛車と王手に打ちおろす。二枚の飛車に左右から挟撃される状況である。ここでもまた手持ちの駒を使うと逆転してしまう。

駒を使って受けないといけないので、絶対絶命かと思われた刹那、なんと、15に据えた角がここでも玉を助けた。角自ら48角と、藤井玉と増田飛車との間に割って入り防ぎとなる。なんとも美しい角である。仕方なく、増田四段は守りに手を戻すが、藤井四段は手堅く玉の逃げ道を封鎖しながら、次に詰ますとばかりに75金と打った。増田四段は、防ぎとなった角を飛車で取り、28角と玉の守りに利かすが、91手目38飛車と藤井四段に打たれた局面で万策尽き投了となった。

2人の天才により作られた素晴らしい棋譜であり、29連勝の新記録を達成した将棋に相応しいと思った。

何度も書いてしまうが、藤井四段は恐ろしいほど強い。まさに将棋の神様に愛されている。

筆者は藤井四段の将棋を見ていて、特に角の使い方にとても魅了される。筆者も角が好きなので、藤井四段の将棋を見ているととても感動する。

八方睨みの角をもっと見せてほしい。藤井四段頑張れ!

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